電池は身近な材料で作れます。例えばレモン!レモン電池に金属板を差し込んで電線でつなぐと、なんとLEDも光ります。基本のしくみは、みなさんがいつもテレビのリモコンやゲーム機のコントローラー用に使っている乾電池と同じです。このタイプの電池は化学電池と呼ばれています。さあ、チャレンジしてみましょう。
銅板 x 2(電池1つに対して1枚)
亜鉛版 x 2(電池1つに対して1枚)
大きなレモン x 1(または小さなレモン2個)
ミノムシクリップつきリード線 x 3
LED(2.2 V)x 1
- 包丁
- まな板
- 金属用はさみ
金属板が手に入らなくても心配する必要はありません。代わりに大きな亜鉛メッキ釘(亜鉛メッキされている必要があります)またはペーパークリップを使用して下さい。どちらも亜鉛でコーティングされています。銅貨またはスピーカー用の導線でも代用できます。ただし、2個以上の電池を作ってつなげる場合は予備のレモンとミノムシクリップつきリード線を用意して下さい。
この実験では、ひとつの大きなレモンから2個の電池を作り、リード線でつないでLEDを点灯させます。まず銅板と亜鉛板を2 枚ずつ、同じサイズで準備します。金属板が大きすぎる場合は大人にカットしてもらいましょう。
金属板が手の脂などで汚れているとパワーが出ないので、
中性洗剤などで洗っておきましょう。
金属板のヘリがとがっていることがあるのでケガに注意!
レモンを机の上で転がしてほぐしておくと果汁があふれ出て実験しやすくなります。レモンを半分に切り、両方の中ほどに金属板が入る切れ込みを、それぞれ2カ所ずつ入れます。切れ込みの間隔は5 mmぐらいで、できるだけ並行に。
大きなレモン1個の代わりに小さなレモン2個を使っても大丈夫。その場合は1/3ぐらいに切り分けて一番大きな部分を電池にしましょう。レモンは果汁たっぷりの新鮮なものがおすすめ。皮が薄いほうが電極が差し込みやすいです。
レモンに銅板と亜鉛版を差し込みます。金属板を少し斜めに差し込むと、レモンに触れる面積が広くなって電流が増えます。
金属板のヘリで手をケガしやすいので注意!心配なときはペンチで挟んで差し込みましょう。
ミノムシクリップがついた黒と赤のリード線を、それぞれの金属板につなぎます。2個のレモン電池の間は、銅板と亜鉛板の間を別のリード線でつなぎましょう。こうすることで電気の回路ができます。
写真では黄色のリード線でレモン電池をつないでいますが、どんな色のリード線でも実験できます。
銅板につながっている赤色リード線の反対側をLEDのプラス側(長い方の足)に、亜鉛板につながっている黒色リード線の反対側をLEDのマイナス側(短い方の足)につなぎましょう。LEDにつなぐことで回路が閉じて電気が流れます。
LEDにはプラス(長い足)とマイナスがあるので気をつけましょう。間違えると光らないうえ、LEDを壊す可能性もあるので、つなぎ方に注意!
LEDが光れば成功!レモンが電池になりました。
しばらくすると光が弱くなります。そのときは銅板をいったん取り出して差し込み直してみましょう。
実験に使用したレモンなどの果物は金属が溶け出しているため、食べてはいけません。
- 金属板、LEDが正しくつながっているかをチェック!
- LEDの長い足 → 銅板〔レモン1〕
- 亜鉛板〔レモン1〕→ 銅板〔レモン2〕
- 亜鉛板〔レモン2〕→ LEDの短い足
- 金属板の差し込み方をチェック!
できるだけ深くささり、レモンに広い面積が接しているか。銅板と亜鉛板の間隔は広すぎないか、逆にくっついていないか。
- LEDをチェック!
2.2 Vで光るタイプか。乾電池2本をつないで光るか。
どうしてレモンが電池になったの?
イオンとは、原子分子(物質をつくっている非常に細かい粒)がばらばらになって電気の性質を帯びたものです。レモンの果汁にはいろいろなイオンが含まれていて、電気を良く通します。このような液を電解液(電解質溶液)と呼び、電池で重要なはたらきをしています。種類のちがう2つの金属が同時に電解液に触れると、間に電流が発生するのです。これが電池の基本的なしくみです。レモン電池のしくみをもう少しくわしく説明します。金属は、溶けるときにマイナスの電気をもつ電子(電気のもとになる原子より小さな粒)を出し、プラスのイオンになります。ただし金属の種類ごとに「イオンへのなりやすさ」に差があり、この実験では銅より亜鉛の方がはるかにイオンになりやすいのです。レモン果汁に触れると銅はほとんど変化しませんが、亜鉛は電子を残してイオンになります。亜鉛板に残った電子がリード線を通って反対側の銅板に移動し、その途中でLEDを光らせたのです。レモン果汁の中で起きているのは一種の化学変化なので、似たしくみをもつ電池を化学電池と呼ぶことがあります。
電池のきほん
- 電池は「2種類の金属」と「電解質」とでできている。
- 電池は金属が化学変化を起こして出す電子を利用する。
- リード線が2つの金属をつなぎ回路を形成する。
- 回路内の電流がLEDを点灯させる。
レモン以外でも、グレープフルーツやキーウィなどの果物や、汁分が豊富な野菜、ジャガイモなども電池になります。いずれも電解質の成分を含んでいるためです。身のまわりのさまざまな材料で較べてみましょう。
乾電池のしくみ
レモン電池などの化学電池は簡単に電気が得られますが、電解質が液体なのでこぼれやすい欠点があります。そこで電解質にさまざまな物質をまぜて固め、持ち運びに便利にしたものが乾電池です。もっとも基本的な乾電池はマンガン乾電池で、亜鉛でできた外側の容器がマイナス極に、電解質にまぜた二酸化マンガンと中心の炭素棒がプラス極になります。なお、アルカリマンガン乾電池はしくみや材料が少し異なりますが、同じ原理で電気を作っています。
※炭素は金属ではありませんが、電気をよく通すうえにイオンになりにくい(化学変化しにくい)ので、電気を集める材料として電池ではよく使われています。
- レモン電池では金属の組み合わせによって発生できる電圧が決まります。
銅と亜鉛の組み合わせでは最大で1.1 Vですが、しばらくすると0.8 Vほどに下がります(発生する水素の影響です)。
- レモン果汁に触れている金属板の面積が広いほど電流が大きくなります。LEDを光らせるにはある程度の面積が必要です。
- 金属板の間隔が広すぎると抵抗が大きくなって電流が流れにくくなります。