中長期戦略の進捗
※このコンテンツは、2024年6月のPanasonic Group 事業会社戦略説明会 2024の発表内容を抜粋したものです。
掲載されている情報は2024年6月現在のものであり、変更される可能性があります。
※このコンテンツは、2024年6月のPanasonic Group 事業会社戦略説明会 2024の発表内容を抜粋したものです。
掲載されている情報は2024年6月現在のものであり、変さらされる可能性があります。
中長期戦略の全体像と経営目標
パナソニック エナジーは、2022年6月に中長期戦略、2023年6月に中長期戦略の進捗を発表しています。車載事業、産業・民生事業の2つの事業での両輪経営の実践に加えて、環境貢献などのESG経営の推進で社会へのお役立ちを拡大する戦略に変更はありません。市場環境が大きく変化する中でも、中長期的に売上高3兆円を超える水準、IRA (注1) 補助金の影響を含まない実力ベースで、20%のEBITDA率(注2)を目指すこと、およびカンザスが本格稼働する2027年までの投資計画に変更はなく、2028年以降の拡大投資は、市場環境を見極めながら柔軟に実施していきます。
2024年度は、産業・民生の増販益や、合理化を推進することで、カンザス工場や和歌山工場を中心とした成長投資に伴う固定費増をカバーし、調整後営業利益1,110億円(前年度比+164億円)となり前年度比増益の計画です。中期経営目標では、営業利益とEBITDAはIRA補助金込みで達成の見通しですが、ROICについては成長に向けての先行投資もあり、9.1%に留まる見込みです。収益性を更に強化し、現中期目標である累積営業CF 3,300億円達成を進めていきます。
2023年度総括
車載事業については、SUBARU社、マツダ社と当社電池の生産・供給について協議を開始し、また、カナダのNouveau Monde Graphite社と黒鉛の長期供給契約を結ぶなど、北米サプライチェーンの構築も着実に進めています。次世代商品の事業化は、4680セルの2024年度2Q末の量産開始に向けて最終段階です。加えて、次世代セルやモノづくりの開発加速に向け、住之江に生産プロセス開発棟を竣工しました。
産業・民生事業においては、生成AIの進化を支えるデータセンター向けの次世代電源システムを量産開始、筐体一体型の家庭用蓄電システムの開発も完了しています。そして、乾電池においては、グローバル旗艦工場として、二色の浜工場が本格的に稼働を開始しました。
オペレーション強化では、車載事業のネバダ工場において、熟練度に依存しない生産体制を構築することで、2021年度比で10%の生産数量増を実現しました。品質ロスも2021年度比で2.5ポイント改善し、収益性強化を進めています。産業・民生のデータセンター事業では、2021年度のモジュール中心から、2023年度はモジュールを組み合わせたシステムへの販売比率が30ポイント増加しました。
また環境取組みでは、自社工場のカーボンニュートラル化を積極的に推進、2023年度末では、全20拠点中14拠点で達成しました。国内工場はさらに計画を前倒しで推進し、2024年度9月には国内全拠点で達成を見込んでいます。人的資本では、2021年度から600名を超える技術人材が新たに仲間になりました。その技術人材がより活躍できる拠点として、2025年度、西門真に研究開発棟の竣工を予定しています。
全体戦略
車載電池の事業環境について、当社の主戦場である北米市場は、EV化率が一時は30年度に50%にまで伸びることが予測されましたが、政府目標の一部修正等もあり拡大のペースは鈍化するも、継続的な成長を見込んでいます。
北米では脱炭素社会の実現に向け、連邦および州レベルで高い環境規制目標が設定されています。車両メーカーがその両方の基準をクリアするためには、現状以上の対応車を生産・販売する必要があります。米国のEV市場は、アーリーアダプターの需要が一巡し、アーリーマジョリティへの移行過渡期にあり、踊り場を迎えていると言われていますが、今後も北米のEV市場は拡大が継続すると考えています。当社は引き続き長い航続距離が求められる米国向けに円筒形電池の性能向上などを強化すると同時に、北米と同様な高性能、高品質が求められ、政府戦略に基づきEV市場の拡大が加速している日本市場においても取組みを強化します。
また、産業・民生の分野では、生成AI用途や電動化ニーズの伸張で、需要は今後も拡大が期待されます。
特にデータセンター市場の電池需要は年率8%成長の見通しであり、その中における当社の有効需要は年率15%で成長しています。当社はこの市場において、更に競争力を高めていきます。
事業環境を踏まえた全体戦略として、両輪経営で中長期の持続的成長を実現に向け戦略の一部修正と補強施策を実行していきます。車載事業はこれまで「北米1軸」で事業を推進してきましたが、「日米2軸」での事業展開に向けて戦略を修正します。また、産業・民生事業は電池応用システムで提供価値を最大化することに加え、補強施策として動力等の新たな領域でポートフォリオを強化していきます。また車載の大きな事業環境変化を考慮し、成長投資は継続していきますが、時期は適時見直しを行います。
次期中期に向けた考え方は、投資フェーズを2026年度までに完了させ、2027年度からはROIC 10%超を安定的に実現、2028年度以降に単年度の営業CFを3,000億円へ持ち上げることで、自己資金で戦略実行ができる経営体質を実現していきます。
車載事業の戦略
車載事業戦略の修正ポイントは、「北米1軸」から「日・米2軸」へ転換と 経営・収益基盤の強化です。経営数値では、2024年度はネバダ工場の増販で全体の販売数量は微増ですが、材料低下見合いの価格改定や為替影響を受け、2023年度から減収を見込んでいます。一方、カンザス工場が立ち上がり生産拡大する2026年度以降は継続的に成長できる見込みです。
その実現に向けてのポイントは、大きく2点あります。1つ目は、北米顧客向け既存の国内工場の日系顧客への供給拠点化。そして2つ目は、ネバダ/カンザス工場による北米収益性最大化です。
短期的に国内事業は、大阪工場における人員シフトや原価改善、和歌山工場で4680セルを計画通りに量産し、収益性を改善していきます。中長期的には、日系カーメーカー様との連携強化を図るとともに、現行の1865セルから、より競争力のある2170セルを中心とした生産ラインに入替えます。また、その導入は北米向けの最新ラインで立上げ、人生産性を35%向上させます。
北米事業に関しては、徹底した改善継続で収益性を最大化すると同時に米国生産品の需要増に対応すべく既存のネバダ工場においても生産能力を拡大します。ネバダ工場は、継続した生産改善により、良い意味での生産能力のアンバランスが発生しており、部分的な設備投資を行うことで、生産能力増が可能となっています。現在、市況変化を受ける中で、組立設備等を追加で部分投資しながら、早期の能力増強を進めています。2024年度4Qから一部稼働を進め、2025年度は5%程度能力増強を達成します。中長期的には、技術革新と現場改善により、ネバダ工場は2023年度比+15%の生産能力アップが今回の部分投資を加えることで実現可能となります。
カンザス工場は、ネバダ工場に対し、GWhあたり30%程度省人化した新コンセプトラインを導入し、加えて、セル容量を5%向上する新材料を使った商品の投入を計画しています。
これらの取組みにより、中長期で成長性と収益性を両立していきます。
産業・民生事業の戦略
産業・民生事業では、中長期的に成長が見込まれるデータセンター等の情報インフラと、動力の電動化領域で拡大を目指します。その中で、高安全・高信頼のセルと制御技術を掛け合わせ、高度なシステム事業を展開し、社会へのお役立ちを最大化します。
経営数値は、収益体質を更に強化しながら、販売成長も実現していきます。データセンター事業は、年率17%成長を見込み、進捗として大手顧客の次世代品受注や高出力のニーズに最適な専用セルの開発も完了しています。動力事業では、電動アシスト自転車から始まり、電動バイクへも拡大、建機・農機その他の産業機器などの電動化の検討も様々になされています。全体としては年率14%の成長を見込み、電動アシスト自転車においては、台湾、日本、欧州等の業界リード顧客の受注を獲得。その他の電動化に向けた実証実験等にも現在取り組んでいます。
今後二輪市場においても、電動化の拡大が期待され、最大市場であるインドへの拡販の検討も進めています。その活動を加速するために、インディアンオイル社と協業についても検討を開始しています。
事業基盤強化と環境貢献への取り組み
事業基盤の強化として、当社は高容量化技術を磨き、技術革新による商品力強化を図ってきました。2170セルは、世界最高容量800Wh/Lの電池をカンザス工場から導入、4680セルも将来的にこの技術を応用していきます。さらに今後の用途拡大を考える中では、従来得意としてきた高容量技術を応用し、高出力が求められる新しい技術プラットフォームを確立していきます。これにより様々な動力系アプリケーションへの競争力を強化します。
サプライチェーンの強靭化では、負極材を中心に、北米などからの調達契約なども着実に推進し、米国地域完結のリサイクル技術の共同開発も進捗しています。加えて、新たに知財への取組みを進化させます。
今回、LGエナジーソリューション社と業界初のライセンスプログラムを立上げ、公正な競争環境の実現はもとより、技術を収入化することにより、将来の差別化技術開発へ再投資を行っていきます。
当社はリサイクル材や再生可能エネルギーを積極的に活用し、カーボンフットプリント(注3)を、2030年度には2021年度時点から半減させることを目指しています。2021年度時点の構成としては、電池の製造プロセス全体におけるCO2排出量の中で、電池製造は14%に留まり、その他の86%は川上側、特に資源採掘や原料加工などからの排出です。
そのため、資源加工プロセスの合理化に加えて、リサイクル材の活用が重要な取組みとなります。当社は、高い資源価値を持つニッケルを中心としたリチウムイオン電池の循環型モデルの構築を目指しています。
寿命を迎えた当社電池のニッケル含有量は、鉱山ニッケル鉱石のおよそ25倍含まれており、まさに都市鉱山と言えます。ネバダ工場の近傍にあるRedwood Materials社と連携して、ニッケルなどの資源循環型モデルの具現化を進めています。経済合理性のあるサーキュラーエコノミーモデルを構築し、脱炭素問題、資源問題の解決に主体的に取り組んでいきます。