水は水素と酸素とでできています。この2つを電気のエネルギーで分けるのが電気分解です。では、逆に水素と酸素を結びつけると電気がつくり出せるでしょうか…? できます! それが燃料電池です。新世代のクリーンなエネルギー源として注目されている燃料電池のしくみを、身近な素材で実験して体験してみましょう。
単一乾電池4本&電池ボックス x 1
太陽電池用モーター&プロペラ x 1
ミノムシクリップつきリード線 x 3
炭素棒 x 2
食塩(茶さじ1杯ほど)
洗濯ばさみ x 2
スプーン x 1
ムラサキキャベツ(半玉ほど)x 1
- 500 mLぐらいのビーカー x 1
- 200 mLぐらいの背の高いガラスコップまたはビーカー x 1
- お湯
- アルミホイル
ムラサキキャベツをちぎり、ビーカー(500 mL)に入れて熱湯を注ぎ、待ちましょう。お湯が紫色になったら、液だけ別の容器(200 mL)に移します。(ムラサキキャベツの色素液)
この色素はアントシアニンといい、酸性ではピンク~赤に、アルカリ性では青~黄緑に変化します。
色素液に水を少し加えて中が見やすい濃さにしてから、500 mLあたり8~10 gの食塩を入れてよくまぜます。
食塩のかわりに食卓塩なども使えますが、食卓塩を使うと色素液の色が少し変化します。
2本の炭素棒を溶液の中に差し込んで、洗濯ばさみなどで容器のヘリに固定します。
液の中にある炭素棒の面積が大きい方がうまくいくので、溶液を多めに入れ、炭素棒が十分に浸かるようにしましょう。できるだけ背の高い容器がよいです。
炭素棒のそれぞれの上端にリード線のミノムシクリップを取りつけます。2本のリード線の反対側を、乾電池を入れた電池ボックスにつなぎます。
ミノムシクリップではさみにくいときは、炭素棒の上の端に幅1 cm ほどアルミホイルを巻き、そのヘリをはさみましょう。
炭素棒のまわりに泡が発生し、電気分解が始まります。
プラス極側は酸性に、マイナス極側はアルカリ性になっていきます。色素液の色が両方の極で異なる色に変化します。
発熱して危険なので2本のリード線は直接つながらないようにしましょう。わずかですが有毒な塩素ガスが発生するので、換気の良いところで実験して下さい。
3~5分ほど置いてから、電池ボックスにつないだリード線をはずして、太陽電池用モーターとプロペラをつなぎ直します。プロペラが回れば成功!容器が発電装置(=模擬的な燃料電池)になりました。
- 配線をチェック!
もし手順5で泡が出なければ、リード線がちゃんとつながっているか、電池ボックスに正しい向きで電池が入っているかなどを確認しましょう。 - 食塩水の濃さをチェック!
薄すぎるとうまく電気が流れない場合があります。
電池をつなぐと泡が出たのはなぜ?
まず、水に電気を通した場合を考えます。右の図のような実験装置で①炭素棒に電池をつなぐと、電子が炭素棒のプラス極からマイナス極へ移動して水に電気が流れます。②水は、水素と酸素が結びついたものです。水に電気を流すと、この水素と酸素が別々に分かれるのです。③プラス極には酸素、マイナス極には水素が集まります。電気を流した際に出た泡は、この酸素と水素です。これを「水の電気分解」といいます。なお、紹介した実験では水に電気を通しやすくするために食塩を入れているので、「水の電気分解」とは少しことなる反応になります。
プロペラが回ったのはなぜ?
「水の電気分解」では、電気の力で水が水素と酸素に分かれましたが、逆に水素と酸素が結びつくと電気ができます。電池を外してプロペラ付きモーターに付け替えると、
①分かれていた水素と酸素が結びついて水に戻ります。
②その時に炭素棒では、電子が移動して電気が生まれます。
③この電気でモーターが動き、プロペラが回転します。つまり水の水素と酸素が燃料電池としてはたらいたのです。
電池のきほん
- 電気エネルギーで水を水素と酸素に分けるのが「電気分解」。
- 逆に、水素と酸素を反応させて電気エネルギーを取り出すのが「燃料電池」。
- 食塩以外でも電解質溶液が作れます。重曹(炭酸水素ナトリウム)やお酢(酢酸)、スポーツ飲料(さまざまなイオンが含まれている)などを使って試してみましょう。
- 電池をつないでいる時間が変わると、発生する電気の量はどのように変化するでしょうか。
- 炭素棒のかわりに、太いえんぴつ芯や備長炭(白炭と呼ばれるかたい炭)でも実験できます。
燃料電池とは
燃料電池とは、水素などの燃料と酸素との化学反応を利用して電力を生み出す装置です。燃料の種類やしくみの違いでさまざまな種類がありますが、火力発電やエンジンなどとちがって二酸化炭素を出さないという特徴があります。このため未来の電力源として注目され、現在では燃料電池自動車として実用化されているほか、停電の時でも発電できることから、役所や公共施設、病院などの非常電源としても活躍しています。
- 火のそばでは実験しないで下さい。
- 乾電池につないだリード線が直接接触しないよう、十分に注意して下さい。接続するときは最後に電池ボックスにリード線をつなぎ、停止するときは最初に電池ボックスのリード線を外します。外した電池ボックスは電極が金属などに触れないよう注意し、1個以上の乾電池を取り出しておくと安全です。
- この実験では、水素と酸素の反応で電気を作るという燃料電池の原理を理解できますが、実際の燃料電池とはしくみが少し異なることを合わせてご指導下さい。