電気と磁力の間にはとても深い関係があります。電流が流れると磁力が生まれ(電磁石)、逆に磁力が変化すると電線に電流が発生するのです。発電機の原理である「電磁誘導」を体験し、電気と磁力の関係を考えてみましょう。
エナメル線(ポリウレタン線)太さ0.4 mm 前後 x 10 m
ネオジム磁石:直径15 mm x 厚さ6 mmぐらいのもの数個
ミノムシクリップつきリード線 x 2
LED(2 V 程度で光るタイプ)x 1
コイルの芯にする適当な筒(単二乾電池やフィルムケースなど)x 1
- 紙やすり(280~400番ぐらい)
- はさみ
- セロハンテープなど
実験例のように単二乾電池を芯にして巻いた場合、約110回巻のコイルができます。コイルの芯にする単二乾電池がない場合はフィルムケースなどを代わりに使いましょう。
まず、コイルを作ります。エナメル線の端を20 cmほど残して、単二乾電池などに巻きつけていきます。巻きつけた幅が直径と同じぐらいになったら、巻きはじめの方向に向けて重ねて巻きましょう。片方の端も20 cm 残します。
強く巻くと芯が抜けなくなるので最初はゆるめに!
エナメル線で手を切らないように注意!
残り20 cm位まで巻いたら芯を抜き、両端を真ん中に1~2回通してしばり、セロハンテープやあまったエナメル線でとめてまとめましょう。エナメル線の両端2~3 cmを、紙やすりでこすってコーティングをはがしておきます。
紙やすりを2つに折って線をはさみ、外側に引っぱるようにこすります。はさむ向きを変えながら20回ぐらいくり返しましょう。
コイルの両端にミノムシクリップを取りつけます。反対側のミノムシクリップを、それぞれLEDの2本の足につなぎます。LEDにはプラスマイナスの向きがありますが、この実験では向きは気にしなくて大丈夫です。
ネオジム磁石を数個重ねて(重ねるのは磁力を強めるためです)、コイルの真ん中に勢いよく近づけたり離したりしてみましょう。
コイルの近くで磁石が勢いよく動くことがポイント!コイルに磁石をぶつける気持ちで近づけるとうまくいきます。
ネオジム磁石はとても強力な磁石。指の皮膚などをはさまないように注意!鉄を引きるけるので鉄製刃物などは遠ざけて下さい。
勢いが十分だと、近づけるとき、または離すときのいずれかでLEDが一瞬だけ点灯します。
うまくいかないときは、磁石の向きを逆にして試してみましょう。
- エナメル線の端をチェック!
失敗のほとんどは、エナメル線の端にコーティングが残っているのが原因です。ミノムシクリップを外してエナメル線をこすりなおすか、2つ折りした紙やすりをはさみで切って短くし、やり直しましょう。コーティングがはがれると、線の色が金色に近くなります。 - エナメル線に電気が通るかチェック!
エナメル線が途中で切れていると、電気が通りません。確かめるにはマルチメーターがあるとかんたんです。
磁石とコイルで発電できたのはなぜ?
磁石同士で引き合ったり反発したりする磁石の力を「磁力」、磁力の流れを表す線を「磁力線」、磁力のおよぶ範囲を「磁場」といいます。磁場に金属を置いただけでは何も起こりませんが、磁石を動かす=磁場が変化するとき、電流が流れます。この実験では、磁石をコイルに近づけたり遠ざけたりしたことで、コイルを通る磁力線が増えたり減ったりする、つまり磁場が変化したので電流が生まれ、LEDが灯ったのです。この現象を「電磁誘導」といいます。
より大きな電気のパワーを得るには?
磁力で起きる電流は、1本の導線ではごくわずか。そこで導線を何回も巻き重ね、磁力を何度も受けたのと同じ効果にするのがコイルです。たくさん巻くほど大きな電流が発生します。また、磁力がより強いと電流も大きくなります。ただし電流は磁力が変化したときしか発生しないので、この実験ではLEDは一瞬しか光りません。
※磁力の変化する向きが逆になると、電流の向きも逆になります。つまり近づけたときと離したときの両方で電流が生まれています。しかしLEDは一方向の電流でしか光らないので、近づけるか離すかのいずれかでしか光らないのです。
電池のきほん
- 磁力の変化によって導線に電流が流れる現象が「電磁誘導」。電線を巻き重ねたコイルを使うと、より効率的に発電できます。
- 同じエナメル線を使って巻き数を変えたコイルをつくり、LEDの光り方を調べてみましょう。
- ネオジム磁石の数を変化させて、同じようにLEDの光り方を調べましょう。
- 磁石の動かすスピードを変えても、LEDの光り方が変わります。大人が手伝い、もっと速く動かすとどうなるか、試してみましょう。
生活の中の電磁誘導
電磁誘導はさまざまに利用されています。例えば、電車の定期券や電子マネーに使われる非接触型ICカードは、電池がついていませんが、読み取り機にかざすと金額などの情報をやりとりできます。これはICカードと読み取り機にコイルと磁力線が組み込まれていて、そこから発生する電気を電源にしているのです。この他にも発電所の発電機からスマホやIHクッキングヒーターにいたるまで、電磁誘導のしくみは現代の生活を支えています。
- このコイルづくりが実験のポイント。性能の良いコイルを作るために、時間をかけてていねいに巻きましょう。
- エナメル線は入手時の巻いた状態からいったんほぐれると、絡まり合ってたいへん扱いにくくなります。ほどいてから巻くのではなく、少しずつほぐしながら作業を進めて下さい。
- エナメル線は太いほど電流が流れやすくなります。コイルの巻き数を増やす場合には、やや太めのエナメル線を使用することで効率を上げることができます。
- 普通の磁石(フェライト磁石、棒磁石)では磁力が弱いため、この方法ではLEDを点灯させることができません。対照実験として試し、強力な磁力が必要であることを説明しても良いでしょう。