36協定 労務管理

労務監査とは?実施のタイミングや流れ、チェックポイント

公開日:2024 / 6 / 8

近年、投資家による投資の判断材料の一つとして企業のコンプライアンス意識が重視されるようになっています。また、求職者が企業を選択する際にも、適切な労務管理が行われているかは重要な判断軸です。そこで社員が快適に働ける環境が整備されているか、法令違反を行ってはいないかなどのチェックに欠かせないのが労務監査です。

今回は、労務監査の概要や実施のタイミング、一般的な労務監査の流れを見たうえで、適切に実施するためのチェックポイントをお伝えします。

労務監査とは

労務監査とは、企業の労務管理が適切に行われているかをチェックするもので、例えば次のような項目が調査対象となります。

など

社員の安全衛生確保への対策については、「過労死ラインとは?残業時間を削減し、過労死を防ぐための対策を解説」や「メンタルヘルス対策の重要性と対策のポイント、効果的な取り組みを解説」「メンタルヘルスケアとは?取り組みのポイントを解説」などを参考にしてください。

労務監査を実施するタイミング

労務監査を実施するタイミングは、企業規模や現状などによりさまざまです。ここでは主なタイミングについて解説します。

  新規上場株式(IPO)を準備するタイミング

企業が労務監査を行うタイミングで多いのが、新規上場株式(IPO)を準備する段階です。IPOをするための審査は厳しく、法令違反を犯している企業は当然ながら上場の認可はおりません。そこで、法令違反がないことの確認のため、労務監査を行います。

具体的にはIPOの検討を始めるタイミング、そして最新の法律にも適合しているかどうかを確認するため、上場審査の直前にも監査をすることでIPOの実現可能性が高まるでしょう。

  スタートアップ企業が急成長で社員数が増加しているタイミング

急成長を続けているスタートアップ企業は、急激に社員数も増加し、労務管理が十分にできないまま規模だけが大きくなってしまうケースも少なくありません。

しかし、もう一段階上の成長を目指し融資を検討した際、労務トラブルや法令違反が発覚してしまうと融資を受けられなくなるリスクが生じます。

そのため、社員を増やすタイミングで改めて就業規則の見直しや労務帳票の整理を行い、労務監査を実施しておくことも重要です。

  労務トラブルの不安を感じたタイミング

IPOや融資の予定がなくても労務監査を行うタイミングはあります。特にこれまで一度も労務監査を実施していない企業は、今すぐに行うのが絶好のタイミングです。

社員からの申告や労働基準監督署の定期調査が入って労務トラブルが発覚すれば、企業の信用や価値の失墜リスクが生じます。もちろん、未払い残業代や長時間労働など社員への負担も増大するばかりになるため、少しでも労務管理に不安を感じたタイミングに労務監査を行うことも大切です。

一般的な労務監査の流れ

労務監査は社内もしくは社外の第三者に依頼して行います。社内で行う場合は、内部監査部門や労務・人事部門、社外の第三者では、弁護士や社会保険労務士、労務コンサルタントなどによって行うのが一般的です。ここでは、労務監査を実施する際のおおまかな流れを解説します。

  労務監査の事前準備

社内で行うのか、外部に依頼するのかを決め、監査を行う内容、範囲、期間などについて監査を行う担当者と話し合いのうえで労務監査の計画立案を行います。労務監査の期間は企業規模や実施内容により、短い場合で数週間から3ヵ月程度、長い場合は1年近くかけて実施するケースもあります。

また、内容や範囲が決まったらそれに合わせて労働条件通知書や給与明細書、勤怠管理表など監査に必要な書面の準備も必要です。

  労務監査の実施

労務監査の主な内容は、用意した労務帳票の確認、書面によるアンケートや対面での聞き取りなどです。これらの監査を終えたら、結果の審査や評価を行い、報告用のレポートを作成します。

  労務監査の結果報告

労務監査の結果報告レポートを受け、問題点の確認と改善に着手します。

適切な労務監査を実現するためのチェックポイント

労務監査では、先に紹介したような項目をチェックします。

「就業規則の内容・運用状況」と「働き方改革への取り組み状況」を例に、チェックポイントを紹介します。

  就業規則の内容・運用状況のチェックポイント

まずは、就業規則を作成して労働基準監督署に届けているかどうかがチェックポイントになります。常時雇用している社員が10人未満の企業では就業規則の作成は義務ではありませんが、トラブル回避のためにも作成が望ましいでしょう。

就業規則は企業が独自に策定するものではあるものの、一定の事項(絶対的必要記載事項)は法律で記載が義務付けられています。また、企業で規則を規定する際に記載すべき事項(相対的必要記載事項)も定められています。

それらの部分について記載漏れがないかどうかもチェックが必要です。主な記載事項は次のとおりです。

  • 主な絶対的必要記載事項
    1. 始業・終業時間と休憩時間、休日・休暇。また、24時間勤務のような交代制で勤務する場合は、交代制の種類、周期、各交代制での始業・終業・休憩時間、休日・休暇などの事項
    2. 賃金の決定や計算、支払い方法、賃金の締め切りや支払い時期、昇給に関する事項
    3. 解雇理由を含む退職に関する事項
  • 主な相対的必要記載事項
    1. 退職する際の手当に関する事項
    2. 臨時(賞与)賃金、最低賃金に関する事項
    3. 安全衛生に関する事項
    4. 災害補償・業務外の疾病扶助に関する事項
    5. その他全労働者に適用される事項など
  • PDFファイル参考:就業規則を作成しましょう|厚生労働省

なお、正社員と有期雇用社員で終業規則や待遇が異なる場合は、それぞれで就業規則を作成する必要があります。また、就業規則の内容を社員に周知しているか、法改正に伴い変更し、都度届けているかもチェックポイントの一つです。

  働き方改革への取り組み状況

働き方改革関連法案への対応ができているかが、重要なチェックポイントになります。具体的には次のような点です。

  • 時間外労働の上限規制が守られているか

    2019年から大企業、2020年から中小企業、そして2024年4月から建設業や医業などで時間外労働の上限規制(月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合にも上限を設定)が適用されています。法定労働時間を超えて社員に労働をさせる場合、36協定の締結が必要になるため、適切に運用されているかどうかのチェックが必要です。

    また、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が、これまで25%だった中小小企業においても50%に引き上げられています。その対応もチェックポイントです。

    ただし、自社内の上限規制を遵守するため、極端な短納期の発注や発注内容のひんぱんな変更など、下請けなどに無理な対応をさせないよう取引環境への配慮も必要とされています。その点もチェックする必要があります。

  • 年次有給休暇を確実に取得させているか

    10日以上の年次有給休暇が発生する社員には、社員の希望を聞きつつ、時期を指定して、少なくとも年5日間、確実に取得させているかもチェックします。

    有給休暇取得義務については「有給休暇消化義務とは?企業が果たすべきことと取得を促す方法」をご覧ください。

健全な企業運営を実現するには適切な労務監査が重要

労務監査は法律で義務付けられているわけではないため、実施していない企業もあるでしょう。しかし、以前にも増して企業のコンプライアンスが重視されるようになっています。適切なタイミングで労務監査を実施し、問題点があれば速やかに改善していくことは、有効なリスクマネジメントともいえます。

労務監査で良い結果を出す、あるいは労務監査での指摘に基づき改善するにあたっては、長時間労働の抑止が重要です。しかし多くの社員を担当部署だけで監視するのは現実的ではありません。業務過多になり、担当者の長時間労働につながってしまう恐れがあります。

そこでおすすめしたいのが、勤怠管理システムと合わせて活用することで高い効果が期待できる、長時間労働抑止システム「Chronowis」です。

Chronowisはパソコンでの業務において、業務時間外のポップアップ表示や強制的なシャットダウンによって、業務終了を促します。働き方改革によりテレワーク社員が増えている企業においても、大きな効果を発揮するでしょう。

効率的に適正な労務管理を実現したい担当者の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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