36協定 残業

36協定の特別条項とは?
時間外労働を制限する内容や注意点を解説

公開日:2024 / 2 / 16

企業が労働者に対し時間外労働や休日労働をさせる際、36協定を労使間で締結する必要があります。締結したとしても月45時間、1年360時間を超える時間外労働をさせることはできません。36協定の特別条項とは、特別な事情がある場合に限り、制限を超えた時間外労働を認める労使協定条項です。

今回は36協定の特別条項について、具体的な内容や締結する際の注意点、働き方改革に関連法との関係について解説します。

36協定の特別条項とは

36協定の特別条項を理解するには、36協定を理解しておかなければなりません。ここでは36協定の概要を解説した上で、特別条項の内容について解説します。

  36協定とは?

労働基準法では、原則として労働者の労働時間と休日は休憩時間を除き1日8時間、週40時間(法定労働時間)、そして毎週少なくとも1回の休日と定めています。36協定とは、労働者に対し時間外労働や休日労働をさせる際に、労使間での書面による合意の基に締結する協定です。

労使間で交わした書面を所轄の労働基準監督署に届け出ることで、法定労働時間を超えて月に45時間、1年で360時間を上限として時間外労働や休日労働をさせることが許されます。

36協定について詳しくは「36協定とは?概要から締結の流れ、メリット・デメリットまで幅広く紹介」をご覧ください。

  36協定の特別条項の概要

36協定により法定労働時間を超える残業もしくは休日労働をさせることが可能です。しかし、多くの業種では繁忙期と閑散期があり、ほぼ法定労働時間内で収まる月もあれば月45時間を超えてしまう月もあるでしょう。トラブル対応や商品のクレーム処理などで突発的に上限を超えて働かざるを得ない場合も考えられます。

36協定の特別条項とは、上述のような事態が起きた際、例外的に36協定で定められている時間外労働時間の上限規定を超えることを可能とするものです。

36協定の特別条項は、36協定同様に労使間で内容について締結し、36協定届に特別条項を添えて所轄の労働基準監督署に提出します。締結すべき事項は次のとおりです。

  • 1ヵ月の法定休日労働を含む時間外労働時間数(月100時間未満)

  • 1年間の法定休日労働を除く時間外労働時間数(年720時間以内)

  • 限度時間を超えて労働を課すことができる回数(年6回以内)

  • 限度時間を超えて労働を課すことができる条件

  • 限度時間を超えて労働を課す労働者の健康および福祉を確保するための措置

  • 限度時間を超えた労働の係る割増賃金率

特別条項付きの36協定の注意点

特別条項付きの36協定を締結することで時間外労働、休日労働の上限を超えることが可能になりますが、無制限に残業をさせられるわけではありません。基本的には1ヵ月の時間外労働や休日労働の時間、1年の時間外労働の時間について限度とされている時間に極力近づけるようにすることが必要です。また、上述した締結事項にはそれぞれに注意すべき点があります。

  • 1ヵ月の時間外労働と休日労働の合計時間数が100時間未満

    時間外労働と休日労働時間の内訳は設定してもしなくても構いませんが、合計は必ず100時間未満にしなくてはなりません。そのため、仮に時間外労働が44時間で36協定の特別条項にならない場合でも同月に休日労働が56時間を超えてしまうと、合計が100時間になってしまうため違反となります。

    また、1ヵ月未満の期間で労働する労働者の時間外労働については、1週間で15時間、2週間で27時間、4週間で43時間を目安に、これを超えないよう努めなくてはなりません。

  • 1年の時間外労働の時間数は720時間以内

    1ヵ月の時間外労働と休日労働時間の内訳は自由であると上述しましたが、時間外労働については1年間で720時間以内が上限です。なお、休日労働は1年間の上限時間については除外されています。

  • 限度時間の超過が認められる回数は6回以内

    時間外労働について、36協定で定められた月45時間を超えられるのは年間で6回以内です。仮に休日労働と合わせ、月100時間を守ったとしても、時間外労働が月45時間を超える月が7回を超えることはできません。

  • 限度時間を超える場合の理由

    特別条項により限度時間を超えて時間外労働や休日労働をさせる場合、臨時的かつ特別な事情が必要であり、事情についてもできる限り具体的に定めなければなりません。例えば、「自社製品のリコールによる迅速な対応」「製造機械のトラブルや故障による臨時的な対応」などです。

  • 限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉の確保

    限度時間を超えて労働させる場合、次に挙げる健康・福祉を確保するための措置について、協定に含めることが望ましいとされています。

    1. 医師による面接指導

    2. 深夜業(22時~5時)の回数制限

    3. 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)

    4. 代償休日・特別休暇の付与

    5. 健康診断の実施

    6. 連続休暇の取得

    7. 心とからだの相談窓口設置

    8. 配置転換

    9. 産業医などによる助言・指導や保健指導

  • 限度時間を超えて労働させる場合の割増賃金率

    限度時間を超えて労働をさせる場合、努力義務として25%を超える割増賃金率を実現するよう努める必要があります。

    また、上述した以外でも次のような点に注意が必要です。

  • 時間外労働と休日労働の合計時間の平均上限

    時間外労働と休日労働、それぞれの1ヵ月の平均時間について、「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」のすべてで80時間以内に抑えなくてはなりません。そのため、1ヵ月100時間未満という上限規制から毎月90~99時間の時間外労働、休日労働をさせてしまうと違反になるので注意が必要です。

    また、月末の2週で80時間、月初の2週で80時間のように連続した4週間で160時間の労働をさせるといったことは避けなくてはなりません。

  • 労働者に対する安全配慮義務

    36協定の範囲内であっても、企業は労働契約法第5条の安全配慮義務を負う義務があります。労働時間が長くなれば過労死との関連性も高まる点については十分に留意しなければなりません。

  • 労働者への周知義務

    36協定の特別条項を締結し、就業規則を変更した際は内容をすべての労働者に周知する義務があります。具体的な周知方法は次のとおりです。

    1. オフィスや工場などの見やすい場所に掲示もしくは備え付ける

    2. 変更した就業規則を書面にして労働者に交付する

    3. 磁気テープ・磁気ディスクもしくはこれらに準ずるものに記録する。その上で各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する

特別条項と働き方改革関連法の関係

36協定の特別条項は、働き方改革関連法の一環として36協定での時間外労働限度時間の上限が決められたことに伴い、新設されたルールです。

働き方改革関連法の施行は2019年4月ですが、それまでの36協定では延長できる上限規制について告示という位置づけであり、超えた場合でも行政指導しかできませんでした。しかし、2019年4月以降、延長できる時間の上限が法律によって定められ、超えた場合は罰則もあります。

特別条項についても、2019年4月以前は延長できる時間の制限は実質的には存在していないことが長時間労働の要因ともなっていたのです。

そういった意味で今回の特別条項付き36協定の法制化は、長時間労働の是正を目的として施行された働き方改革関連法のなかでも重要なポイントだといえるでしょう。

36協定の特別条項を遵守するには適切な労務管理がポイント

従来、法的な義務のなかった36協定ですが、2019年4月に働き方改革を実現させるための手段の一つとして時間外労働、休日労働の上限規制が法制化されました。企業側は特別条項を締結することで月100時間未満、1年間で720時間までの時間外労働、休日労働を労働者に課すことが可能です。

ただし、長時間労働の是正を目的として法制化されたこともあり、特別条項の締結事項に関してはしっかりと把握した上で、遵守することが求められます。そのためにも欠かせないのが適切な労務管理です。労働者の勤務時間を把握し、時間外労働や休日労働が多いものに対しては上限時間を超えないように努めなければなりません。そこでおすすめなのが長時間労働抑止システム「Chronowis」の利用です。

パソコンの利用制限と稼働ログの取得が行えるため、勤怠管理システムとの併用で長時間労働を防止できます。残業時間が月間の上限値に達した場合、事前通知がされる上、超えれば強制的にシャットダウンされるので時間外労働の上限規制にも対応可能です。

36協定の特別条項を遵守するためにもぜひご検討ください。

関連記事

Chronowisのお役立ち資料

テレワークにおけるコミュニケーション不足とメンタルヘルス不調への対策とは!?

テレワークにおけるコミュニケーション不足とメンタルヘルス不調の傾向と対策について解説します。

3分でわかる!
長時間労働抑止システム「Chronowis」

社員の心身の健康維持を支援するサービス、長時間労働抑止システム「Chronowis」について解説します。

テレワーク中の労働時間管理
3つの課題と解決のアイディア

本資料では、テレワーク中の労働時間管理の課題について、解決のためのアイディアを解説していきます。

製品版と同じ環境を1ヵ月無料でお試しいただけます!
ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。