残業 36協定 健康管理

過労死ラインとは?
残業時間を削減し、過労死を防ぐための対策を解説

公開日:2024 / 1 / 25

業務における過度な負荷により脳や心臓疾患に加え、精神障害などを原因として死亡してしまうことを意味する過労死。一時期に比べれば減少傾向にあるものの、現在においても長時間労働や過重労働が常態化している企業もあり、早急な残業時間の削減が必要です。

今回は、残業による過労死ラインを確認したうえで、企業が持つべき残業や過労死ラインに対する認識、残業による過労死を防止する取り組みについてお伝えします。

残業の過労死ラインとは

過労死の主な要因は長時間労働や過重労働です。ここでは、過労死の現状を見たうえで、過労死の要因である残業時間の目安となる過労死ラインについて解説します。

長時間労働、過重労働についての詳細は、「なかなか減らない長時間労働!その原因と効果的な対策とは?」「過重労働とは?法律改正による変更点や企業のリスク対策を解説」をご覧ください。

  過労死の現状

厚生労働省が発表した「令和4年版過労死等防止対策白書」によると、2021年に脳・心臓疾患で労災支給が決定した172件のうち、死亡による労災支給は57件です。2001年以降、死亡による労災支給がもっとも多かった2002年の160件に比べると、約3分の1まで減少しています。

一方で、2021年の精神障害にかかる労災支給は629件と、2001年以降もっとも多い件数となっています。そのうち死亡(自殺〔未遂含む〕)は79件。これは最多ではありませんが、もっとも多かった2014年99件と比較して、大きく減少しているともいえません。

全体的な傾向としては、身体的疾患によるものは減っているものの、精神障害にかかる死亡件数は増加しているといえるでしょう。

  過労死ラインの基準

過労死ラインとは、脳や心臓疾患、精神障害により死亡につながってしまう労働時間の目安を指すものです。具体的には「発症前1ヵ月で100時間以上」もしくは「2~6ヵ月の平均80時間以上」が過労死ラインとなります。

一般的に残業時間が80時間を超えると健康障害が発生するリスクが高まるといわれているため、厚生労働省が残業時間を労災認定の基準として設定しました。

2021年9月、労災認定の基準において下記のような項目が追加されています。

  1. 上述した残業時間に至らなかった場合でも、これに近い残業を行った場合
  2. 休日のない連続勤務をした場合
  3. 終業から次の勤務の始動までの時間(勤務間インターバル)が短い業務をした場合
  4. 出張以外で事業場外における移動を伴う業務をした場合
  5. 心理的負荷を伴う業務をした場合(従来の精神的緊張を伴う業務の内容拡充)
  6. 身体的負荷を伴う業務
  7. 対象疾病の追加(重篤な心不全)

また、短期間の過重業務や異常な出来事の、業務と発症との関連性が強いと判断する内容が、下図のように明確に例示されています。

短期間の過重業務/異常な出来事

企業が持つべき残業や過労死ラインに対する認識

前項で説明したように2019年9月以降、労災認定基準は大きく変更されました。理由は過労死につながる病気を引き起こす要因が、単純な長時間労働だけではないと考えられるようになったことが挙げられます。

そのため、企業としても過労死ラインに対する認識を新たにし、残業時間を超過しなければ問題ないといった考えは捨てなければなりません。

そもそも2019年4月以降、働き方改革関連法案により月45時間・年360時間という残業時間の上限規制が設定され、超えた場合は労働基準法違反となります。

残業時間を削減するための取り組み、対策を実施し、法令遵守はもちろん、社員が快適に働ける環境を構築するにはどうするべきかを考えることが重要です。過労死ラインはあくまでも労災認定の基準であり、社員に残業をさせてもよい最終的なラインではないといった認識を持つ必要があるといえるでしょう。

残業による過労死を防ぐための取り組み

企業が残業による過労死を防ぐには何をすべきなのでしょう。ここでは、主な取り組みについて解説します。

  法令の遵守・国が推奨する制度や対策の積極的な導入

働き方改革関連法により、過労死を防ぐための取り組みはこれまで以上に徹底することが必要です。基本的な取り組みとしては、次のような法令の遵守、国が推奨する制度や対策の積極的な導入などです。

  • 時間外労働の上限規制の順守
  • ストレスチェックの実施
  • ハラスメント防止対策の実施
  • 勤務間インターバル制度の導入
  • 「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」および「仕事と生活の調和推進のための行動指針」の順守

などが挙げられます。企業としてこれらを理解し、実施・遵守する環境の整備は必須といえるでしょう。

  業務プロセスの見直し

残業が発生してしまう要因の一つとして、業務の流れがスムーズではない、アナログ業務が多く属人化しているなど、業務プロセスに問題のあるケースが少なくありません。無駄な業務はないか、自動化できる業務はないかなど従来の業務プロセスを見直し、問題があれば迅速に改善するようにします。

  相談窓口の設置

残業はそれほど多くなくても過労死してしまう可能性があります。大きな原因の一つがストレスです。社内の人間関係や業務の進め方など、社内でストレスを溜め込まないようにするには、安心して話せる相談窓口や産業医の設置を行う必要があるでしょう。

  労務管理の徹底

残業による過労死を防ぐために欠かせないポイントとして挙げられるのが労務管理の徹底です。具体的には長時間残業をしている社員がいないか、不調をきたしている社員がいないかなどを常に把握します。見つけた場合は早い段階で声掛けをして業務の割り振りを見直したり、医師の診断をすすめたりすることで過労死の防止につなげます。

労務管理の重要性やより適切な管理の方法については、「労務管理のメリットは?システム活用でメリットを最大化するポイント」をご覧ください。

過労死防止には残業に対する意識改革と適切な労務管理が重要

2019年9月に約20年振りに過労死ラインの改正が行われました。これにより長時間労働や過重労働による労災認定の基準がこれまで以上に明確になっています。

過労死ラインを超えなければよいということではなく、少しでも残業を削減し、働きやすい快適な職場環境を構築することが重要だと認識する必要があるでしょう。

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