働き方改革

有給休暇消化義務とは?
企業が果たすべきことと取得を促す方法

公開日:2024 / 3 / 5

1年で10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して毎年5日は確実に取得させることが、改正労働基準法によって義務化されました。2019年4月より、すべての企業、業種において、適用されています。

今回は、有給休暇消化義務の概要から違反した場合の罰則、企業側が知っておくべきポイント、労働者に有給休暇を促す方法について解説します。

有給消化義務とは

有給消化義務の解説をするうえで、まずは有給休暇について説明します。

  有給休暇の概要

有給休暇とは、労働基準法第39条において、次のように定められています。

“使用者は、その雇入れの日から起算して6ヵ月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。”

有給休暇を与えるのは正規雇用の社員だけではありません。契約社員や派遣社員、アルバイト、バートタイマーなど半年間の全労働日で8割以上出勤したすべての労働者に与える必要があります。勤続年数と有給休暇付与日数は次のとおりです。

継続勤続年数(年)※1

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5以上

付与日数(日)

10

11

12

14

16

18

20

なお、週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の場合、有給休暇の付与日数は次のとおりです(週所定労働日数が1日の場合、有給休暇取得日数は最大で3日、2日の場合は7日)。

  週所定
労働日数
1年間の所定
労働日数※2
継続勤務年数(年)

0.5

1.5

2.5

3.5

4.5

5.5

6.5以上

付与日数(日)

4日

169日~216日

7

8

9

10

12

13

15

3日

121日~168日

5

6

6

8

9

10

11

※1 継続勤務とは、事業場における在籍期間を意味するものです。勤務の実態に即して実質的に判断されます。例えば3ヵ月の契約で勤務した場合でも契約更新で半年を超えて継続勤務をすることになった場合、半年を超えて継続勤務をした1年ごとに有給休暇が新しく付与されます。

※2 週以外の期間によって労働日数が定められている場合

  有給消化義務の概要

有給休暇は付与するだけで利用されなければ意味がありません。実際、2023年10月に厚生労働省が発表した「令和5年就労条件総合調査」によると年次有給休暇取得率は62.1%です。

この数字は昭和59年以降過去最高ですが、労働者30~99人の企業では57.1%と60%を割っています。政府は2025年までに有給休暇取得率を70%まで引き上げることを目標としているため、さらなる有給休暇取得の推進が欠かせません。そこで企業が理解しておかなければならないのが有給消化義務です。

有給消化とは、労働者が保持している有給休暇を実際に取ることを意味するものです。有給休暇は基本的には労働者側から企業に申し出ることで取得します。しかし、前述したように現状では約6割しか有給休暇は消化されていません。そこで2019年4月、改正労働基準法により、企業は年に10日以上の有給休暇を保持する労働者に対して1年で5日の有給休暇を消化させることを義務付けました。これが有給消化義務です。

  有給消化義務に違反した場合の罰則

有給休暇義務に違反した場合、労働基準法第39条第7項、労働基準法第120条により30万円以下の罰則が科されます。注意点は対象の労働者1人につき30万円の罰則がある点です。そのため、2人であれば60万円、5人であれば150万円となります。

労働基準法違反について詳しくは「労働基準法違反とは?労働時間超過を含め違反の例と罰則」をご覧ください。

有給消化義務を果たすうえで企業が知っておくべきポイント

企業が有給消化義務を果たすうえで幾つか注意しなければならない点があります。具体的には次のとおりです。

  出勤率を算出する際の注意点を把握する

通常の労働者で有給休暇が発生する要件は、入社時から6ヵ月間継続して勤務し、かつ全労働日の8割以上出勤することです。ただし、業務上でのケガや病気で休む場合、法律上の育児休業や介護休業を取得した場合は、休んでいる期間も出勤したものとして取り扱います。また、会社都合で休業となった場合、その日数は原則として全労働日から除外して出勤率を算出しなくてはなりません。

  時季変更権を使用する際の注意点を把握する

有給休暇の取得は基本的に労働者の申出によって取得日が決まります。ただし、労働者の指定した日に有給休暇を付与すると事業の正常な運営が妨げられる場合は、企業側が休暇日を変更する権利があります。これを時季変更権といいますが、「繁忙期だから」といった理由だけでは基本的に認められません。繁忙期でなおかつ同日にすでに多くの労働者が休暇指定をしているといった、代替社員も用意できない場合のみ認められるケースが多く、権利の使用には十分な検討が必要です。

労働者に有給消化を促す方法

有給消化が義務化されたものの、特に慢性的な人員不足に悩む企業では周囲に気を使って利用しにくいと考える社員がいるかもしれません。そこで労働者が有給を消化するために企業側がやるべき施策について解説します。

  部署、チーム間での情報共有を徹底する

誰が何をしているか、どこまで業務が進んでいるかを常に共有することで、誰が休んでもほかの社員が代替できる環境を整備します。

  年次有給休暇の計画的付与制度を活用する

年次有給休暇のうち、5日を超える分については労使協定の締結により、計画的に休暇取得日を割り振れる制度を活用するのもよいでしょう。例えば年末年始や夏季休暇時に計画的付与制度を活用する、飛び石連休になっている日に計画的付与制度を活用するなどが考えられます。

  年次休暇の時間単位付与を行う

丸1日の休暇を取得させるのが難しい場合、労使協定の締結により、5日の範囲内で時間を単位として有給休暇を与えられる制度があります。この制度を活用すれば、効率的に年次休暇の消化が可能です。

適切な有給休暇取得を実現させるにはツールの活用がポイント

2019年4月1日から適用が開始された有給休暇消化の義務化。年間で10日以上の有給休暇を取得する労働者に対し、5日間は必ず有給取得をさせるものです。休日以外にもしっかりと休息を取り、労働者のワークライフバランスを充実させるうえでも企業が取得を徹底させなければなりません。

ただし、最近ではテレワークが一般化したこともあって、有給休暇中でも自宅で作業をしてしまう労働者も少なからず存在します。自宅で作業をした場合、企業側はその事実を把握することが難しく、把握できないままに36協定違反になってしまうリスクが発生します。在宅勤務の労働者ついても適切な労務管理が求められます。そこでおすすめなのが長時間労働抑止システム「Chronowis」です。

パソコンの利用制限と稼働ログの取得が行えるため、勤怠管理システムとの併用で有給休暇中の業務を防止できます。また、残業時間が月間の上限値に達した場合、事前通知がされるうえ、超えれば強制的にシャットダウンされるので、時間外労働の上限規制にも対応可能です。

有給休暇消化義務を果たすためにも、ぜひ「Chronowis」の活用をご検討ください。

関連記事

Chronowisのお役立ち資料

テレワークにおけるコミュニケーション不足とメンタルヘルス不調への対策とは!?

テレワークにおけるコミュニケーション不足とメンタルヘルス不調の傾向と対策について解説します。

3分でわかる!
長時間労働抑止システム「Chronowis」

社員の心身の健康維持を支援するサービス、長時間労働抑止システム「Chronowis」について解説します。

テレワーク中の労働時間管理
3つの課題と解決のアイディア

本資料では、テレワーク中の労働時間管理の課題について、解決のためのアイディアを解説していきます。

製品版と同じ環境を1ヵ月無料でお試しいただけます!
ご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。