テレワーク
テレワークが抱える課題とは?
解決策や運用のポイントを解説
公開日:2024 / 5 / 14
2020年5月、新型コロナウイルス感染防止対策として緊急事態宣言が出されたことにより、多くの企業がテレワークを導入しました。テレワークは政府が推し進める働き方改革の実現にもつながるとして、新たな働き方として定着しつつあります。
しかしコロナ禍が落ち着くにつれ、オフィス勤務に戻った企業も少なくありません。そこにはどのような事情があるのでしょうか。
今回はテレワークの現状、テレワークが抱える課題や解決に向けた取り組み、今後のテレワーク運用のポイントなどについて解説します。
テレワークの現状
日本においてテレワークの導入は、新型コロナウイルスの感染防止対策として一気に進みました。パーソル総合研究所が行っている「テレワークに関する調査」によると、2020年3月9日~15日時点での実施率13.2%から、第1回目の緊急事態宣言が出てすぐの4月10日~12日の実施率は27.9%まで急増しています。
その後2022年7月まで毎回ほぼ25%を超える実施率を保っていたものの、2023年7月13日~18日には22.2%に低下しました。この傾向は、企業規模や業種、地域などによる偏りもほぼありません。
数字的には急激に低下というわけではありませんが、2022年2月をピークに緩やかな下降線をたどっているというのが現状です。
テレワークが抱える課題
テレワークは、多様な働き方やワークライフバランスの実現などメリットが多いものの、課題も少なくありません。主な課題として挙げられるのは次の点です。
テレワーク制度の整備が進んでいない
前出の「テレワークに関する調査」によると、テレワークを実施しない理由で最も多かったのは「テレワークを行える業務ではない(40.4%)」です。例えばドライバーや医療、建設現場での業務など、自宅では行えない業務が考えられます。
次に多かったのが「テレワーク制度が整備されていない(33.7%)」です。テレワークをする社員を対象にしたルールが企業として正式に制定されておらず、スムーズに導入が進まないといったことが考えられます。
テレワークで働く際のルールが明確でなければ、テレワークを行う社員と行わない社員の間で不公平感が生じ、チームワークも乱れてしまいかねません。
言い換えると、テレワークのための制度整備にかかる手間や時間が、テレワーク導入・維持を阻む要因の一つとなっているのかもしれません。
生産性の向上が難しい
社員の自宅ではペーパーレス化やデバイスの準備、そのほか必要なICT機器など、オフィスと比べるとテレワーク環境の整備は進んでいないのが一般的です。また、仕事とプライベートの区別をつけにくく、集中力を欠いてしまうといったこともありがちです。このように、オフィス勤務よりも生産性の向上が難しい環境にあるのも大きな課題でしょう。
テレワークにおいて生産性向上を図るヒントについては、「在宅勤務で長時間労働が常態化 生産性を上げるベストな解決方法は?」をご覧ください。
勤怠管理が難しい
勤務形態にかかわらず、企業は適正な勤怠管理の義務を負います。しかしテレワークでは社員の勤務状況が把握できず、違法な長時間労働となっていても気づくことが困難です。逆に、本来は勤務時間内であるにもかかわらず、仕事をさぼってしまう社員がいないとも限りません。勤怠管理の難しさも、テレワークの大きな課題です。
テレワークは、いわゆる隠れ残業の主な発生理由になっています。隠れ残業によるリスクや対策については、「隠れ残業とは?主な発生理由やリスク、防止対策を解説」をご覧ください。
モチベーションの維持が難しい
多くの場合テレワークは自宅で一人きりの作業となるため、オフィスにいるようなコミュニケーションは困難です。オフィスにいる社員が何をしているかが見えずに、孤独感を持ってしまい、モチベーションの維持が難しくなりがちです。
テレワークでのモチベーション維持については、「テレワークでモチベーションが下がる!?維持・向上のためにできること」をご覧ください。
情報セキュリティリスクがある
テレワーク社員が使うパソコンやスマートフォンなどセキュリティ対策に不安が残るのも大きな課題です。ハード面での問題だけではなく、社員に対するセキュリティ教育も不十分だと、情報漏えいリスクが高まり、オフィスに比べて情報セキュリティリスクが高くなります。
テレワークの課題を解決するための取り組み
テレワークには紹介したような課題があります。しかしメリットも多く、例えばテレワークに象徴されるような柔軟な働き方ができるかどうかは、昨今、求職者にとって会社選びの重要なポイントとなっています。
2023年5月に「en人事のミカタ」が行った調査によると、大事にしている企業選びの軸として、「希望の働き方(テレワーク・副業など)ができるか」との回答は全体で約28%。年代別では、40代以上は約21%ですが、20代で約35%、30代で約37%となっており、多くの若い求職者が、多様な働き方ができる企業を望んでいることがわかります。
また、採用における強みになるだけでなく、育児や介護などでも仕事を続けやすいため、離職防止にも寄与します。テレワークの導入あるいは維持には、制度や環境の整備のための手間もコストも発生しますが、長期的に考えると十分価値があるといえるでしょう。
多様な働き方を実現して人材を確保するためにも、テレワークが抱える課題の解決につながる具体的な取り組みを紹介します。
テレワークの運用ルールを策定する
テレワークの対象となる業務やテレワークの頻度、始業・休憩・終業時間とその管理方法、人事評価の方法、テレワーク時の光熱費や通信費といった経費の負担など、明確なテレワークの運用ルールを策定しておくことが大切です。社員の中には、テレワークに必要なデバイスやICT機器などが自宅にそろっていないことがあります。その場合の購入費用の扱いや貸与などについても、忘れずルールに盛り込んでおきましょう。
策定したルールは、オフィス勤務が中心になる社員も含めて、全員で共有します。テレワークをする社員、オフィスで勤務する社員、双方が気持ちよく業務にあたれるよう、それぞれルールに納得してもらうことが重要です。疑問点や不満点がある場合には、意見や質問をしやすいような雰囲気づくりも必要でしょう。
各種ツールを活用する
テレワークの課題解決には、コミュニケーションツールや勤怠管理ツールなど、さまざまなツールの活用も有効です。一例としては、テレワークをする社員が孤立しないようチャットツールでいつでも質問できる体制にする、お昼休憩の後に5分程雑談の時間を設けるなど、コミュニケーションの場を確保するといったことが考えられます。
また前述のとおり、テレワークという勤務形態においても適正な勤怠管理は企業の義務です。勤務状況の把握が難しいテレワークの社員の勤怠管理を効率化するシステムの導入はもちろん、システムとの連携により、長時間労働を防止するツールの活用もおすすめです。
ハイブリッドワークを導入する
テレワークしやすい業務の社員について完全テレワークになるケースもあるでしょう。その際も、育児や介護などでどうしても出社が難しいといった場合以外は、「週に1回はオフィスへ出社する」などのルールを決め、ハイブリッドワークを導入するのもよい方法でしょう。ツールを使ってある程度のコミュニケーションは図れても、顔をあわせてのコミュニケーションはやはり必要です。また、定期的な出社は程よい緊張感があり、仕事とプライベートのメリハリをつける手助けになるほか、同僚の仕事ぶりを間近で感じることでモチベーションの維持・向上にも期待できます。
セキュリティ対策の徹底
テレワークという勤務形態は、オフィスでの勤務と比較して情報漏えいのリスクが高くなる傾向にあります。セキュリティソフトの導入やアクセス制限、パスワードの設定、情報の持ち出しルールの策定、セキュリティリテラシーを高めるための社員教育など、基本的なセキュリティ対策は必須です。具体的なセキュリティ対策の方法については、総務省が策定している「テレワークセキュリティガイドライン」が参考になるでしょう。ガイドラインは改定を重ねており、最新版は令和3年5月に公表された第5版です。
今後のテレワーク運用のポイント
テレワークは社員に多様な働き方を提供し、人材確保にも大きく役立つ勤務形態ですが、紹介してきたような課題があるのも事実です。コロナ禍を機にテレワークを導入したものの、維持するかどうか判断に迷っている企業もあるでしょう。
いくつか課題があるにせよ、テレワークには人材確保などのメリットがあります。人材確保は、昨今多くの企業においては死活問題ともいえます。
テレワークの課題は企業によって異なってくると思いますが、まずは今回紹介した内容なども参考にしながら、自社における課題解決のための取り組みを試みてはいかがでしょうか。
テレワークに課題を感じた際に、維持するかしないかを判断する最も重要なポイントとなるのは、テレワークで社員が快適に働けているかどうか、オフィスで勤務する社員も納得し、必要に応じてお互いうまく連携しながら業務を遂行できているかどうかです。
それを知るには社内アンケートを取り、社員の意向を聞いてみるのが王道でしょう。多くの社員がテレワークを望んでいるのであれば、やはり維持するべきといえます。
一方で、テレワークによる生産性があまりに低く、企業の業績に悪影響を及ぼしているのであれば、社員がどれだけ継続することを望んでいても、いったん見直す必要はあります。
どこに問題があるのか、どうすれば生産性を上げられるのかを検討し、できうる限りの対策を講じます。それでも生産性が上がらない場合は、状況に応じて、完全なオフィス勤務に戻す、オフィス勤務を基本としたハイブリッドワークに移行するなどの判断も必要になるでしょう。
なお、新規にテレワークを導入するか迷っている場合は、まずはアンケートを取り、社員の意向を把握することが重要です。
社員が快適に働ける環境構築がテレワークの課題解決にもつながる
コロナ禍が落ち着いたこともあり、テレワークからオフォス勤務へ戻す企業が増えています。
自宅で一人で作業をしていると孤独に陥りモチベーションが上がらなかった、テレワーク用の明確なルールがなく、社員間で不公平感が生じてしまったなどの課題があったからでしょう。
これらの課題を解決するには、ハブリッドワークの導入、テレワークに合ったルールの策定などさまざまな取り組みが考えられますが、ツールの活用も極めて有効です。
例えば、テレワークでは人の目がないため、社員によっては長時間労働になってしまいがちといった課題があります。オフィスとは異なり直接様子をうかがえないため、ツールの活用による施策が欠かせません。
テレワークでの長時間労働を抑止し、快適に働けるようにするためにおすすめなのが、長時間労働抑止システム「Chronowis」です。パソコンの利用制限と稼働ログの取得により勤怠管理システムとの併用で長時間労働の抑止が行えます。テレワークを導入した際の長時間労働を抑止する対策として、ぜひ活用をご検討ください。
テレワークの課題と解決策は、次の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。「在宅勤務が抱える問題点とは?解決策と解決のポイントを紹介」
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