建設業 働き方改革

建設DXとは?
建設業界でDXを推進するメリットやポイント

公開日:2024 / 6 / 8

デジタル技術の活用により、新しい製品やサービスの開発、新規事業の創出などを実現し、競合に対する優位性を確立するために求められるDX(デジタルトランスフォーメーション)。2024年4月より時間外労働の上限規制対象となった建設業界ではこれまでの働き方を見直す必要があり、DXによる変革を実現する絶好のタイミングともいえます。

今回は、建設業界に求められるDXについて、必要な理由、得られるメリットを解説したうえで推進するためのポイントをお伝えします。建設業界でDX実現を模索する担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

建設DXとは

まずDXとは、デジタル技術を活用し、これまでの仕事やビジネスモデルなどを変革していくことです。

建設DX実現への具体的な取り組みとしては、手作業で行っていた計画、設計、施工などの工程でAIやIoTを活用する、古い基幹システムを刷新して新しいシステムに置き換えるといったことなどが挙げられます。

デジタル技術の活用により新しい価値を創出し、市場競争力を高めることがDXの目的です。

  建設業界にDXが必要な理由

DXの本来の目的は市場に新しい価値を提供して競争力を向上させることですが、デジタル技術の活用により業務効率化が実現できることもDXの大きな意義です。

業務効率化により建設業界における次の課題の解決につながることも、業界においてDXが必要とされている理由です。

  • 人材不足や高齢化
    建設業界の人材不足は他業種に比べても深刻な状況です。2023年11月、株式会社帝国データバンクが発表した「人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)」によると、建設業界の正社員不足の割合は69.5%となっています。この数字は、「旅館・ホテル(75.6%)」「情報サービス(72.9%)」に次ぐ数字です。

    PDFファイル参照:人手不足に対する企業の動向調査(2023年10月)|株式会社帝国データバンク

    また、2021年3月に国土交通省が発表した「最近の建設業を巡る状況について【報告】」では、建設業就業者の割合が、2020年の段階で55歳以上が36.0%と3分の1以上を占めています。これに対し29歳以下は11.8%と10分の1程度しかいません。

    PDFファイル参照:最近の建設業を巡る状況について【報告】|国土交通省

    このまま高齢化が進めば将来的には今以上に深刻な人材不足となり、これまでのような成長を続けることは困難です。そのため、早い段階でDXを実現させ、新たな成長の柱を構築することが重要となっています。

    建設業の人材不足についてより詳しくは、「建設業の人手不足による長時間労働を解決するには?2025年問題についても解説」をご覧ください。

  • 働き方改革へ対応

    2019年に施行された時間外労働の上限規制が2024年4月1日から建設業にも適用されました。長時間労働が常態化していた建設業において、時間外労働の上限規制対象になったことは大きな転換期です。

    厚生労働省が2024年2月に発表した「毎月勤労統計調査令和5年(2023年)結果速報」において、建設業は、月間出勤日数がすべての業種のなかで最も多い20.1日となっています。総実労働時間も「運輸業、郵便業(167.7時間)」に次いで多い164.4時間であり、働き方改革に対応するためにもDXの推進により働き方の根本的な変革が求められています。

    PDFファイル参照:毎月勤労統計調査令和5年結果速報|厚生労働省

    建設業の休日については、「建設業にも求められる週休二日制!実現するための対策を解説」をご覧ください。

建設DXに効果が見込める主な技術と適用例

DXの実現にはデジタル技術の活用が欠かせません。建設業におけるDXも同様で、さまざまなデジタル技術を用いることでスムーズなDXの実現が可能です。ここでは、具体的にどのようなデジタル技術が用いられるのかについて解説します。

  AI

建設ロボットに熟練工の動きを学習させ、ロボット単体では難しかった作業を自動化が可能です。画像認識AIを活用し、これまで目視で行ってきた建物の外観検査を自動化して省人化を実現するなど、建設業界ではさまざまな場面でAIの活用が期待されています。

  IoT

IoTも建設業界で欠かせないデジタル技術の一つです。例えば、オフィスビルや商業施設など大規模な建築現場で、Bluetoothセンサを資材や作業員につけることで、どこに何があるか、誰がどこにいるかが可視化されます。その結果、業務がスムーズに進むようになり、無駄な時間の削減につながります。

  クラウド

クラウドサービスの活用により、現場とバックオフィスのスムーズな連携が可能です。オフィスで働く人が何度もオフィスと現場の行き来をする必要もなくなり、業務効率化が果たせるようになります。

  ドローン

無線で遠隔操作が可能なドローンには撮影機能があるため、測量データの取得で高い効果が期待できます。また、高所や斜面など人が作業するには危険な場所の確認も遠隔地からできるようになり、事故が起きるリスク軽減にもつながるでしょう。

建設DXで得られるメリット

建設DXを推進することでさまざまなメリットを得られるようになります。主なメリットは次のとおりです。

  人材不足の対応策になる

DXの実現にはデジタル技術の活用が欠かせません。アナログで行っていた業務をデジタル化することで業務効率化につながるため、人材不足の対応策になります。

  働き方改革実現の可能性が高まる

業務効率化が進めば、長時間労働や休日出勤の軽減が実現する可能性も高まります。その結果、適切な労務管理が可能になるため、働き方改革の実現にもつながるでしょう。

  継続的な成長が見込めるようになる

建設DXの推進により新たな事業の創出が実現すれば、競合に対する優位性を確保でき、継続的な成長も見込めるようになります。

  スムーズな技術継承が可能になる

これまで建設業界ではアナログな形での技術継承が一般的でした。しかし、人材不足が進む現状では、継承の時間もつくれず、高齢化を待つばかりです。そこで建設DXを推進すれば熟練工の技術をデジタル化して残せるようになり、少ない人材、時間のなかでもスムーズな技術継承が可能になります。

建設DXを推進するポイントと注意点

建設DXを推進するにはさまざまなポイントを押さえる必要があります。また、進める際の注意点もあります。

  建設DXを推進するポイント

  • 現状の課題を把握する
    DXの実現にはデジタル技術の活用が欠かせません。しかし、デジタル技術を導入するには多くのコストや扱える人材が必要になります。まずはあらゆる業務プロセスを可視化させ、課題点を明確にすることが重要です。何を解決しなければならないか、そのためにはどのような技術や人材が必要かを見極めます。
  • スモールスタートで始める
    初めから全社でDXを進めようとしても簡単にはうまくいかない企業もあるでしょう。また、それだけのリソースを確保するのが難しいところもあるかもしれません。そういった場合は、まずは一つの部署だけで始める、一つの業務から始めるなどスモールスタートで始め、成果を確認しながら取り組みを拡大していくことが有効です。

  建設DXを推進する際の注意点

DXを進める必要があるからと強引に推進しようとすると、社員のさらなる長時間労働につながってしまう可能性があります。前述のとおりDXは人材不足対策や働き方改革の実現につなげるためにも重要とされています。そのDXを進めるために、社員の労務管理が杜撰になるようであれば本末転倒です。ただし、労務管理を徹底するために労務担当者の負担が大きくなるのも避けたいところです。労務管理にもシステムやツールを活用し、効率化することを検討しましょう。

建設DXの実現には労務管理の効率化も重要

労働基準法では、使用者(経営者や人事担当者など)に、社員の労働時間を適切に管理することを義務付けています。

労働時間を適切に管理するためには、法定労働時間や所定労働時間、拘束時間との違い、36協定、法定外残業に対する割増賃金など、必要な知識を整理し、正しく理解する必要があります。そのうえで、社員一人ひとりの始業時間や休憩時間、残業時間などを正確に把握し、「法定外残業があった場合の割増賃金」「時間外労働の上限規制」などを厳守しなければなりません。

建設DXとは、アナログ作業の多い建設の生産プロセスをデジタル化する、システムを刷新するなどにより、現状の業務課題を解決しつつ変革を実現させる取り組みです。他業種に比べ、長時間労働が常態化している建設業界において、時間外労働の上限規制対象となった今こそ、大きな変革を行う絶好の機会といえます。

建設DXの実現には、現状把握やスモールスタートなど無理せず確実に進めていくことが大切です。ただし、DXの推進が社員の長時間労働につながることは避けなければいけません。それには、労務管理についてもデジタルの力を借りて効率化することが一つの手段となります。

例えば、長時間労働抑止システム、「Chronowis」。時間外のパソコン利用をポップアップとシャットダウンで制限できるため、オフィスやテレワークで働く社員の時間外労働抑止に高い効果が期待できます。労務管理システムとセットで活用することで時間外労働の上限規制にも対応可能です。

AIやIoTなどのデジタル技術導入を進めつつ、労務管理や長時間労働の抑止もシステムを活用して効率的に進めていきましょう。

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