建設業
建設業の人手不足による長時間労働を解決するには?2025年問題についても解説
公開日:2023 / 10 / 27更新日:2024 / 1 / 18
建設業の就業者数は1997年の685万人をピークにその後はゆるやかに減少の一途をたどり、2020年は約28%減の492万人(平均)です。しかし、建設投資額がいったんは落ち込んだものの2013年辺りから増加に転じたことで、人手不足が大きな課題となっています。
少子高齢化による労働生産人口の減少はもはや解決の見込みがないなか、限られた人数で仕事だけが増えれば長時間労働も避けられません。
そこで本記事では、建設業界の人手不足によって引き起こされる長時間労働の解決策についてお伝えします。2025年には全人口の30%が高齢者になると予測されているなかで、迅速な解決策を求める担当者の方はぜひ、参考にしてください。
建設業の人手不足が指摘される2025年問題とは
建設業の人手不足が指摘されている2025年問題とは、従業員の高齢化により2025年に大量の退職者が出ることで、今以上に人手不足が深刻化していくと予測されている問題です。
総務省統計局が発表した労働力調査(2022年)を見ると、40歳未満が全体の約26%に対し、41歳以上が約74%です。そのなかでも65歳以上は約17%と高齢化が進んでいます。
2025年4月からは高齢者雇用安定法により、全ての企業で定年が延長されますが、それでも65歳になれば定年で退職しなければなりません。2022年時点で65歳以上の建設業従事者は全体の約17%、人数にして約81万人(平均)です。
この人数に加え2022年時点で62歳以上の方も2025年には定年となり一気に退職すれば、2025年以降、かなりの建設業者が人手不足による廃業に追い込まれる可能性も高まるでしょう。
また、建設業では2025年問題に加え、2024年4月1日より時間外労働時間に罰則付きで上限が設けられる、働き方改革関連法が施行されます。建設業は、2024年と2025年問題の迅速な解決が求められています。
2024年問題について詳しくは、「建設業の2024年問題とは?課題や有効な対応方法を解説」をご覧ください。
建設業の人手不足が起こる原因
建設業の人手不足が起こる原因はいくつか考えられますが、主なものとしては次の点が挙げられます。
長時間労働の常態化
厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査(令和4年分結果)」によると、建設業の1ヵ月平均総実労働時間は163.5時間で、運輸業・郵送業に次いで2番目に長い時間です。全体の平均が136.1時間ですから、27.4時間も多く、1日で1時間以上の差があります。
また出勤日数は20.0日で、これは鉱業、採石業などに次いで2番目に多い日数です。これも全体の平均(17.6日)に比べ2.4日も多く、建設業の長時間労働が常態化していることがわかります。4週で8休のいわゆる完全週休2日が実現しているのはわずか19.5%なので、8割以上が週休2日未満というのが現状です。
長時間労働の常態化がそのまま人手不足の原因ではないと思われる方も多いかもしれません。しかし、2022年4月に日本建設産業職員労働組合協議会が発表した、「2021時短アンケートの概要」では、残業時間が長い従業員ほど、建設業に魅力を感じないと回答しています。
2020年から2021年の1年で建設業に魅力を感じないと回答したのは、所定外労働時間が30時間未満の従業員が12.3%なのに対し、100時間以上の従業員は29.5%と約2.4倍です。
そして、「転職を考えている」、「今すぐ転職したい」と回答したのは、所定外労働時間が30時間未満の従業員が9.2%なのに対し、100時間以上の従業員では28.2%と約3倍となっています。
これらの結果からも長時間労働は転職の要因であり、ひいては人手不足にも大きな影響を与えていると考えてよいでしょう。
業務負担の大きさ
従業員一人ひとりにかかる業務負担が大きいのも、人手不足に少なからず影響を与えていると考えられます。そもそも人手が減少し続けているなか、建設投資額は2013年から増加傾向にあるため、仕事はどんどん増えているというのが現状です。
建設投資額は、ピーク時の約84兆円(1992年)からは約34%減の約55兆円(2020年)ですが、もっとも落ち込んだ2011年の約42兆円からは約13兆円も増加しています。
その結果、年々従業員にかかる負担は増え続け、休みが少なく業務負担も大きいことから退職者が増え、人材不足につながっているのではないでしょうか。
業務内容などをITツールではなくアナログで管理している
建設業では、多くの業務で現在でもアナログ管理が一般的といった企業が少なくありません。これも長時間労働の原因であり、最終的には人手不足にもつながっています。
例えば作業日報を手書きで記入し事務所に提出してから退勤する、全ての日時報告がそろってから確認し管理用のExcelに入力する、という状態では、事務所への移動時間や記入者と管理者が二重で記載するといった時間が発生します。
ITツールであれば入力後すぐに確認し、問題なければ管理用のExcelに入力する手間もありません。細かなアナログ対応の積み重ねも従業員の負担につながるため、残業時間も長くなってしまうと言えます。
建設業の人手不足を解決するためのポイント
人手不足につながる原因はさまざまですが、これらの課題を解決するためのポイントについて解説します。
職場環境の改善
人手不足の解決には職場環境の改善が欠かせません。具体的には、男性育休制度やフレックスタイム制度の導入、有給休暇取得の奨励、福利厚生の充実などが挙げられます。誰もが快適に働ける環境が整備されれば、従業員満足度が向上し離職率の低減が実現するとともに、魅力的な職場として知られることで新たな就業者の増加にもつながるでしょう。
従業員の意識改革
人手不足の解決を目的にさまざまな制度を導入しても、既存社員が拒否反応を示すようでは絵に描いた餅になりかねません。前出の「2021時短アンケートの概要」でも、建設産業に魅力を感じない理由でもっとも多いのは「労働時間が長い」ですが、次に多いのは昔ながらの風土への適応の難しさでした。全従業員が先述の新たな制度の導入を理解し、誰もが気軽に利用できるように意識改革をする必要があります。
業務を効率化するITツールの積極的な導入
少子高齢化が進み、急激な人口増加が見込めない以上、限られた人数で最大の効果を発揮させないと建設業として生き残ってはいけません。そのため、業務効率化を図るうえでITツールの積極的な導入を進めるのが効果的です。
RPAや原価管理、発注管理、工程管理などの業務自体をITツールの導入により効率化したり、労務管理ツールを活用して従業員の時間管理をしたりすることで、所定外労働時間の削減にもつながります。
建設業の人手不足を解決するには職場環境の改善が必要
建設業の人手不足はここ何年かで始まった問題ではありません。しかし、時間外労働時間に罰則付きで上限が設けられる働き方改革関連法の施行という2024年問題が迫っています。そして、高齢者雇用安定法により定年が延長されるものの、65歳になれば退職しなければならない2025年問題など課題は山積です。
今すぐにでも対応を始めなければ、今以上に従業員にかかる負担が増大してしまうでしょう。そうなれば退職者も増加し、最悪の場合、廃業せざるを得なくなる可能性も高まります。
そこで、人手不足を解消するために必要なポイントは、誰もが快適に働ける職場環境の改善です。新たな制度を受け入れ、気持ち良く使えるようにするための意識改革などが欠かせません。そして、快適な職場環境の実現に必要となるのが、労務管理におけるITツールの導入です。
業務効率化はもちろん、労動時間の管理も適切に行えるようになるため、長時間労働の削減、人材の安定が可能になるでしょう。
パナソニックでは、パソコンの利用制限や稼働ログの取得などにより、長時間労働の抑止を支援するサービス「Chronowis」を提供しています。2024年問題や2025年問題を控え、早急に人材不足解消を検討している際には、ぜひお気軽にご相談ください。
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