建設業 残業 36協定
建設業も対象となる36協定とは?2024年4月施行に向けて建設業が抱える課題と解決策を解説
公開日:2023 / 10 / 27更新日:2024 / 1 / 18
働き方改革関連法案の一つに、時間外労働の上限規制があります。2019年4月1日より施行されていますが、建設業は規制の対象外でした。しかし、2024年4月1日より建設業も上限規制の対象になります。
そこで把握しておくべきは、上限規制の詳細です。本記事では、建設業も対象となる時間外労働の上限規制に関する法律である36協定について概要を解説します。どのような対応を行うべきか、現時点で長時間労働が常態化している場合、どう解決すべきかを検討している企業担当者の方はぜひ、参考にしてください。
2024年4月1日から建設業にも適用される36協定とは?
時間外労働の規制について解説します。
36協定で定める時間外労働の上限規制とは?
36協定とは労働基準法第三十六条に基づく労使協定の略称で、時間外および休日の労働について定めた法律です。
もともと労働基準法において労働時間は原則として1日8時間、1週40時間以内にすると定められています。これが法定労働時間です。法定労働時間を超えて働く場合、以前は行政指導が入ることはあっても、法的な上限規制はありませんでした。つまり、上限なく時間外労働させることも可能だったのです。
しかし、政府が推進する働き方改革の柱の一つでもある「長時間労働の是正」の実現に向け、まずは大企業を対象に2019年4月1日から時間外労働の上限規制が施行されました。具体的には、原則として月45時間、年間で360時間とし、臨時的な特別の事情がない限りは、上限規制を超えると6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
また、時間外労働や休日労働をさせる必要がある場合は、36協定届を作成し、所轄労働基準監督署⻑に届け出なければなりません。
36協定の特別条項とは?
36協定の特別条項とは、臨時的な特別の事情がある場合で労使間での合意があれば、時間外労働の上限を超えて働かせることを可能にしたものです。ただし、以下の条件は守らなくてはなりません。
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計について、「2ヵ月平均」「3ヵ月平均」「4ヵ月平均」「5ヵ月平均」「6ヵ月平均」が全て1月当たり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6ヵ月が限度
ただし建設業の場合、災害時における復旧および復興事業については、時間外労働と休日労働の合計で月100時間未満、2~6ヵ月平均80時間以内とする規制は適用されません。
36協定の特別条項を適用するには、前述した36協定届に加え、様式の異なる36協定届を所轄の労働基準監督署⻑に届け出す必要があります。
建設業の2024年問題や時間外労働の上限規制についてより詳しくは、「建設業の2024年問題とは?課題や有効な対応方法を解説」をご覧ください。
多くの建設業が抱える2つの課題
多くの建設業では、時間外労働の上限規制に対応するには難しい2つの課題を抱えています。具体的には次のとおりです。
長時間労働
建設業は、以前ほどではないものの、現在においても他の業種に比べ所定外労働時間が長い傾向にあります。2023年4月に日本建設産業職員労働組合協議会が発表した「2022時短アンケートの概要」では、所定外労働時間の平均が40.1時間です。職種別で見ると外勤建築(58.2時間)、外勤土木(51.7時間)と上限規制を超えています。
人材不足
建設業は、1997年をピークに人材の減少が続いています。しかし、建設投資額は2013年あたりから増加しているため、恒常的な人手不足状態です。少子高齢化の影響もあり、人手不足が急激に回復する可能性も低く、限られた人数で増加する業務を行うには長時間労働が避けられないといった状況にあると言えます。
建設業の人手不足問題について詳しくは、「建設業の人手不足による長時間労働を解決するには?2025年問題についても解説」をご覧ください。
36協定遵守に向け課題を解決するためのポイント
建設業が抱える課題を解決し、36協定を遵守するためのポイントを2つ紹介します。
業務を効率化させる
2022年4月に日本建設産業職員労働組合協議会が発表した「2021時短アンケートの概要」で、残業する理由としてもっとも多かったのは、「社内書類の処理業務が多い」です。また、外勤では「発注者向け書類業務が多い」も上位にあり、書類業務の多さが残業につながっていると言えます。
これを解決するには、書類の簡素化や社内書類フォーマットの共有化に加え、ペーパーレス化の推進も欠かせません。外出先からでも書類業務ができれば、大幅な効率化が可能です。書類作成や処理のためだけにオフィスに戻る必要もなくなり、残業時間削減にもつながるでしょう。
長時間労働対策についてより詳しくは、 「なかなか減らない長時間労働!その原因と効果的な対策とは?」をご覧ください。
ITツールを導入する
残業時間削減にはITツールの導入も欠かせません。前述したペーパーレス化に加え、定型業務の自動化を実現するRPA、情報共有をスムーズにするためのノートパソコンやスマートフォンの貸与なども必要です。
また、労働時間管理においてもITツールの導入が求められます。現状でも残業時間削減を掲げ、残業時間の報告義務を設けている企業は増加していますが、残業時間の削減につながっていないケースが少なくありません。
特に36協定の複合条件を満たすための作業を、全てアナログで行うのは手間がかかるうえに抜け漏れや見落としのリスクも大きくなります。従業員からの報告形式では、上限を超えた際、目標達成のために忖度してしまう場合もあります。
そこで必要なのが自動的に労働時間を管理できるITツールの導入です。ITツールであれば正しい残業時間の報告が可能です。そもそも虚偽の報告は、36協定はもちろん残業代未払いという法令違反にもつながるため、会社として適切な対策を講じることが重要と言えます。
36協定に対応するには適正な労働時間の管理が必要
2024年4月には、建設業に36協定が適用されます。これまでは一定の時間を超えて残業した場合でも行政指導だけでしたが、今後は法令違反として罰則も科せられるため、36協定を理解して適切に対応することが重要です。
一方で、業務の多さや人手不足など長時間労働が恒常化してしまった状況では、36協定に対応するのは簡単ではありません。そこで求められるのが業務効率化です。ペーパーレス化や書類の標準化など社内で対応できることは早急に実施し、少しでも効率的に働ける環境づくりをする必要があります。
また、残業時間を削減するうえでもっとも必要なのが労働時間の適切な管理です。限られた時間のなかでどうやって業務を進めるかを考える意識を持つことが欠かせません。そこでおすすめしたいのが、長時間労働の抑止を支援するサービス「Chronowis」です。長時間労働を減らすには、パソコンの利用制限や稼働ログの取得はもとより、複数の条件を満たさなければならない36協定のチェック項目に漏れなく対応できるよう事前にアラートを上げることが可能です。
さらに勤怠管理システムと連携して、時間外利用時のポップアップ表示や強制シャットダウン、残業時間が月間の上限値に達する前の事前通知などさまざまな機能で長時間労働削減に貢献します。
長時間労働対策を検討している際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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