働き方改革
働き方改革はいつから開始された?実現させるためのポイントや成功事例を紹介
公開日:2023 / 7 / 26更新日:2024 / 1 / 18
世界に類を見ないスピードで進む日本の少子高齢化により、多くの企業では人材不足が大きな課題になっています。また、少子高齢化は育児や介護の負担増を生み出し、働きたくても退職せざるをえない社員の増加にもつながっています。
政府はこうした課題の解決を目指し、働き方改革を導入しました。しかし、どのように対応すればよいのか把握しきれていない企業も少なくありません。そこで今回は、働き方改革はいつから開始され、いつまでに対応すべきか、対応するためには何に注意すべきかを成功事例を交えて解説します。
働き方改革とは?
働き方改革とは、少子高齢化による生産年齢人口の減少、働き方の多様化などの課題を解決し、生産性向上や就業機会の拡大などを目指すための関連法案の総称です。
具体的には、2018年6月に働き方改革法案が成立し、2019年4月から「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」が順次施行されています。
働き方改革が求められている理由
働き方改革が求められている理由はいくつか考えられますが、なかでも主な理由として挙げられるのは次の3点です。
- 長時間労働の是正
少子高齢化により生産年齢人口の減少が続き、多くの労働者の長時間労働が慢性化しつつあります。そのため、労働時間の適切な管理や労働時間の短縮、労働時間の計測・管理体制の整備などによる過労死や健康被害のリスク低減が求められるようになっています。 - 正規、非正規の格差解消
現在、正規社員と非正規社員との間では、待遇や労働条件の格差が開きつつあるのが現状です。そのため、非正規社員の安定した雇用や公平な待遇の提供により、安心感やモチベーションの向上が求められるようになっています。 - 多様で柔軟な働き方の実現
育児や介護など、働く人の多様なニーズやライフスタイルに合わせた働き方が実現すれば、これまでは退職・休職せざるをえなかった社員が継続して働けるようになります。また、テレワークの導入により、幅広い地域から優秀な人材の確保が実現すれば、人材不足の解決も可能です。
働き方改革はいつまでに行うべき?
働き方改革関連法は、大企業では2019年4月1日、中小企業では2020年4月1日より施行されています。そのため、原則として現時点で対応していない企業は罰則の対象となります。ただし、時間外労働の上限規制について、次に挙げる4つの職種は、2024年3月31日まで猶予期間が設けられています。
- 建設事業
- 自動車運転の業務
- 医師
- 鹿児島および沖縄県における砂糖製造業
※ 上記の職種は2024年4月1日以降も一般の職種とは時間外労働の上限時間が異なります。
働き方改革に対応するためにやるべきこと
働き方改革関連法の概要
働き方改革に対応するには、働き方改革関連法の次の8点について、理解と把握が必要です。
- 時間外労働の上限規制
原則、時間外労働は月45時間かつ年間で360時間以内と規定。特別な事情があり労使間で合意があったとしても、月100時間未満、年間720時間以内が上限 - 年次有給休暇の確実な取得
年間で10日以上の有給休暇が発生している労働者に対し、企業は年5日の有給休暇を取得させることの義務付け - 中小企業における月60時間超の残業の割増賃金率引き上げ(2023年4月1日施行)
中小企業では、2023年4月1日より、月の時間外労働が60時間を超えた場合、残業の割増賃金の割増率を50%以上に引き上げ(大企業は2019年年4月時点ですでに適用済み) - 「フレックスタイム制」の拡充
従来、最大で1ヵ月単位でしか適用されなかったフレックスタイム制が、2ヵ月、3ヵ月単位での適用も可能に変更 - 「高度プロフェッショナル制度」の創設
年収が1,075万円以上なおかつ一定の専門知識を持った職種の労働者を対象に、労働時間規制や割増賃金支払いの対象外とする制度の導入(本人の同意が前提) - 産業医・産業保健機能の強化
長時間労働やメンタルヘルスの不調などで健康リスクが高い労働者を見逃さないため、産業医による面接指導や健康相談を確実に実施する体制の強化 - 勤務間インターバル制度の導入促進
1日の勤務が終了してから翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を設ける制度の導入 - 正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の禁止
同一企業・団体において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目指し、仕事内容に変わりがない場合、正規と非正規で不当な待遇差を禁止
働き方改革関連法に対応するために企業がとるべき対策
働き方改革関連法に対応するため、企業として行うべきは次の5点です。
- 労使協定の改定と締結
労使協定とは、労働組合と使用者が労働条件について書面で契約した協定のことです。企業は、長時間労働の是正、有給休暇の取得促進、テレワークの導入などを盛り込んだ労使協定を締結することで、さまざまな取り組みの実施が可能になります。 - 就業規則の改定
就業規則は、企業の労働条件やルールを具体的に定めたものです。働き方改革に対応するためには、就業規則の見直しや改定が必要です。就業規則に労働時間、休日、休暇、賃金、昇給、退職、解雇などの労働条件を明確に定めることで、働き方改革に対応できるでしょう。 - 労働契約書の明示方法変更
労働契約書とは、労働者と企業の間で結ばれる契約書のことです。働き方改革では、労働者に対して明確かつ理解しやすい形式で労働条件や働き方についての情報を提供する必要があります。
2019年4月1日からは、労働基準法の改正により、労働契約書は書面だけではなく、FAXやEメールのほか、SNSメッセージ機能を使った明示も可能になりました。明示した内容は必ず事実と一致していなければなりません。 - 産業医の選任
常時50名以上の労働者を使用する企業で産業医を選任していない場合は、迅速に選任する必要があります。産業医は50名以上で1名以上、3,000人を超える場合は2名以上の産業医が必要です。また、常時1,000人以上の事業場もしくは常時500人以上の労働者を使用する一部の業種では、専属の産業医を選任しなければなりません。 - 労使間での情報共有の徹底
働き方改革関連法により、自社の就業規則がどう変わったか、どのように対応していくかについて、社内報や社内SNS、Eメールなどを通して情報共有の徹底が必要です。双方の認識のずれがないよう、しっかりと情報を共有していくことが求められます。
働き方改革の成功事例
実際に働き方改革に成功している事例を紹介します。
ITツールの導入によりテレワークの効率化と生産性向上を実現
情報通信業のA社では、勤務時間や勤務場所の柔軟化により、業務効率化を目的としてフレックスタイム制度とテレワーク制度を導入しました。そこで効果を発揮したのがITツールです。
フレックスタイム制度では、社員のスケジュール管理にグループウエアのカレンダー機能を活用しました。それぞれのペースで働きつつ、業務スケジュールの共有を実現しています。
また、テレワークでは、ノートパソコンやスマートフォンの支給に加え、デジタルツールやコミュニケーションツールを導入してコミュニケーションを活性化させ、業務効率化を実現しました。これにより長時間労働を削減しただけではなく、生産性向上にもつながっています。
社内ポータルサイトの活用で働き方・休み方改善の推進
設備工事業のB社では、社員に従来の働き方を見直してもらうため、社内ポータルサイトを活用して社長自ら動画でメッセージを配信し、周知を徹底させました。
また、働き方改革を推進する部署として立ち上げたワーキングイノベーション室のページも設置し、働き方改革への取り組み情報を発信しています。各事業部の取り組みも掲載し、全社で取り組みが進むよう推進活動を行っています。
働き方改革を実現させるための注意点
働き方改革を実現させるためには、いくつかの注意点があります。具体的には次のとおりです。
- 働き方改革関連法の理解
働き方改革関連法の内容を理解したうえで、自社の課題点を可視化させる必要があります。課題が具体化されれば、課題解決に向けてどのような行動に取り組めばよいか明確にでき、スムーズな働き方改革ができるでしょう。 - 働き方改革実現のためのスケジュールを設定する
いつまでに実施するかを明示し、それに向けてスケジュールを設定する必要があります。スケジュールが曖昧であれば、いつまで経っても働き方改革に取り組めずに、生産性の低下につながってしまう恐れがあります。そのため早期に計画的なスケジュールの設定を行いましょう。 - ITツールを活用する
ITツールを導入・活用することで働き方改革をスムーズに行えるでしょう。例えば今まで紙や表計算ソフトなどで多くの時間を要していた業務を効率化できたり、それに伴い勤務時間を短縮できたりするなど働き方改革の取り組みとして効果的です。また、ITツールで管理するため、アナログな方法に比べて正確に管理できます。具体的には、会計・人事・販売などの基幹ツールの導入・クラウド化、RPA、労務管理ツールの導入を検討しましょう。
働き方改革に対応するためには労務管理と合わせた取り組みが必要
大企業では2019年4月、中小企業では2020年4月から施行されている働き方改革関連法に対応しない企業には罰則があるものの、全てに対応しきれていないケースも少なくありません。
働き方改革に対応するには、働き方改革を理解したうえで、労使協定や就業規則の改定・締結が重要です。しかし、それらを実現することは簡単ではありません。
多くの企業で人材不足が慢性化している今、残業時間の削減や有給休暇の確実な取得などを可能にするには、ITツールの活用が重要なポイントとなるでしょう。業務効率化はもちろん、オフィスにいる社員とテレワーク社員とのコミュニケーション活性化や労務管理の効率化、働き方改革の実践状況に関する情報発信、クラウド化による生産性向上などのさまざまな効果が期待できます。
このように導入メリットが多いITツールの中でも、労務管理分野のITツールとしておすすめなのは、「Chronowis」です。「Chronowis」は、勤怠管理システムと連携してパソコンの利用制限や稼働ログの取得により、長時間労働の抑止を支援するサービスで、長時間労働の解消に大きく貢献します。働きすぎの社員が多い、テレワークで社員の勤務実態が見えにくいなどで働き方改革の実現が難しいとお悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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