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電子帳簿保存法に対応し請求書を電子データ保存する際知っておくべき基礎知識
公開日:2024 / 3 / 29
電子帳簿保存法の改正を機に、経理や会計処理で扱う書類や帳票、帳簿の多くを電子データ化する機会が増える企業は多いでしょう。請求書も対象書類の一つです。電子帳簿保存法における「保存」には、電子帳簿など保存、スキャナー保存、電子取引データ保存の3区分があり、請求書は「スキャナー保存」「電子取引データ保存」の2つが関係してきます。
今回は、電子帳簿保存法での請求書にかかる保存要件や取り扱いなどについて説明します。
電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法は、税務関係帳簿書類の電子データ保存を可能とする法律です。1998年の施行以来、数回の改正を経て帳簿や取引関係書類の電子データ保存が大きく推進されています。
電子帳簿保存法上では、電子データ保存は、次の3つに区分されています。
- 電子帳簿など保存
会計システムなどを利用して帳簿書類を作成し、そのまま保存
- スキャナー保存
紙の取引関係書類をスキャンしてデータ化し、保存
スキャナー保存について詳しくは、「電子帳簿保存法におけるスキャナー保存とは?そのポイントを解説」をご覧ください。
- 電子取引データ保存
メールなどインターネット経由でやり取りした取引関係書類の電子データをそのまま保存
電子帳簿保存法の基本的な内容について詳しくは、「電子帳簿保存法をわかりやすく解説!必要な対応とは」をご覧ください。
電子帳簿保存法は前述のとおり、税務関係帳簿書類全般に関わる法律です。ここでは請求書について紹介します。
電子帳簿保存法上の請求書の保存要件
電子帳簿保存法はこれまでに4回改正されており、そのたびに適用条件や保存要件が緩和されています。現在の保存要件は、「電子帳簿など保存」「スキャナー保存」「電子取引データ保存」の3つの区分により異なります。
請求書はこのうち「スキャナー保存」か「電子取引データ保存」の対象書類です。
スキャナー保存とは
取引相手から紙で受け取った請求書や取引相手に紙で渡した請求書の写しは、スマホやスキャナーで読み取った電子データで、保存(スキャナー保存)が可能です。
ただし、スキャナー保存を行うためには、「真実性の確保」と「可視性の確保」が求められます。そのため、保存要件を満たす必要があります。
- 入力期間の制限
請求書を作成または受領してから業務処理サイクル(最長2ヵ月以内)経過後、概ね7営業日以内にスキャナー保存すること
- 解像度・諧調の条件
解像度200dpi相当以上、赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調以上(24ビットカラー)で読み取ること
- タイムスタンプの付与
入力期間内に、入力単位ごとのデータに、タイムスタンプを付与すること
- 検索機能の確保
取引年月日、任意の日付、取引金額、取引先名などでの検索、範囲指定検索、2つ以上の項目の組み合わせ検索などが可能であること
電子取引データ保存とは
電子メールの本文や添付ファイル(PDF)などの電子データで請求書をやり取りしている場合は、電子データのまま保存(電子データ保存)しなければなりません。今回の改正により、電子取引データ保存は全事業者を対象に義務化されています。
電子データ保存をする際は、「真実性の確保」と「可読性の確保」のため、それぞれ次のような保存要件を満たす必要があります。
- 真実性の確保
次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 不正な訂正削除の防止に関する事務処理規程の制定と遵守
※ 電子取引データに関する事務処理規定のサンプルは国税庁でも用意されています。 - タイムスタンプの付与された取引情報を受領する
- 取引情報受領後、タイムスタンプを付与する
- 訂正・削除の履歴が残るシステムなどで授受・保存を行う
- 不正な訂正削除の防止に関する事務処理規程の制定と遵守
- 可視性の確保
次のような要件を満たす必要があります。
- ディスプレイやプリンター、操作説明書を備え付ける
- システムの概要書を備え付ける
- 検索機能(取引年月日・取引金額・取引先についての検索、日付・金額範囲での検索など)を確保する
電子帳簿保存法での請求書の扱い
電子帳簿保存法上での請求書の扱いについて、発行する側・受領する側に分けて紹介します。
請求書を発行する側
請求書を発行した場合の処理は、紙で発行する場合と電子データで発行する場合の2つに分かれます。それぞれの場合の保存要件に注意してください。
- 紙で発行する場合
紙で請求書を発行する場合、請求書の控えは紙のままの保存で問題ありません。企業内の規定により、保存要件に従って電子データ化し、スキャナー保存することも認められます。
- 電子データで発行する場合
電子メールの本文や添付ファイル(PDF)など電子データで発行する請求書は、そのままシステム上で、保存要件に従って電子取引データ保存しなければなりません。
請求書をパソコンで作成して取引先に紙で発行した場合は、控えは紙でも保存要件に従って電子データとして保存しても、どちらでも問題ありません。
請求書を受領する側
請求書を受領した場合の処理も、紙で受領した場合と電子データで受領した場合の2つに分かれます。
- 紙で受領した場合
紙で受領した請求書は、そのまま紙で保存します。企業内の規定により、保存要件に従って電子データ化し、スキャナー保存してもかまいません。
- 電子データで受領した場合
電子メールの本文や添付ファイル(PDF)など電子データで請求書を受領した場合は、保存要件に従って電子データのまま電子取引データ保存しなければなりません。
電子帳簿保存法を前提にした請求書の電子データ化について詳しくは、次の記事をご覧ください。
請求書を電子データで保存する際の注意点
請求書を電子データで保存する際には、次のような点に注意が必要です。
取引先との合意と社内運用についての確認をする
電子帳簿保存法に対応するためとはいえ、社内だけで請求書の電子データでの運用を決め、いきなり会計システム上で請求書をやり取りしたり、電子メールの本文や添付ファイル(PDFなど)で請求書を送受信したりするわけにはいきません。まずは、取引先の合意が必要です。
中には電子データでのやり取りが難しい取引先もあるでしょう。その場合は、紙の請求書を発行、あるいは受領し、控えや原本は保存要件に従ってスキャナー保存するなどと、運用方法を決めておきます。
必要なシステム・ツールの導入を検討する
電子帳簿保存法の改正により、2024年からは、電子取引データ保存が義務化されます。それに対応するため、改めて自社の会計業務フローについて見直す必要があるでしょう。
その際、タイムスタンプを自動で付与できる、訂正・削除の履歴が残るなど、電子帳簿保存法に対応する機能を持つ会計システムを導入すると、会計処理を大きく効率化でき、法改正にもスムーズに対応できます。
また、自社ではシステムを導入して法改正に対応していても、取引先からはまだ紙の請求書を受領することもあります。そのような場合にスキャナー保存する際は、OCRツールが有効です。OCRツールを活用すると、システムへの入力作業を大幅に効率化できます。
電子帳簿保存法に基づき請求書を電子データで保存するにはOCRツールの活用を
電子帳簿保存法の改正により、電子取引データ保存が義務化されました。電子データでやりとりした請求書についても適切に対応する必要があり、自社の会計業務を見直して整理していくことが必要です。
一方で、多くの企業では自社の体制や取引先の希望などさまざまな理由により、紙の請求書を扱うこともまだまだ多いでしょう。その場合は紙での保存のほか、保存要件に従ってスキャナー保存を行うことも可能です。
スキャナー保存をする際は、OCRツールの活用が有効です。例えば紙の請求書からの転記を大幅に効率化するAI-OCR、「WisOCR for 注文書・請求書」は、高い認識精度でクセのある手書き文字なども正確に認識し、スムーズに電子データ化することができます。電子帳簿保存法への対応をご検討されている場合は、ぜひ一度ご相談ください。
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