制度紹介
電子帳簿保存法をわかりやすく解説!必要な対応とは
公開日:2024 / 3 / 29
電子帳簿保存法は、社会の変化に合わせてこれまでも改正が重ねられてきました。2022年の改正に続き、2024年から新たな改正内容が実施されます。今回の改正では電子取引についてのルールが厳正化されますが、企業にはどのような対応が求められるのでしょうか。
今回は、電子帳簿保存法の基本知識と改正の内容、具体的な対応の方法を解説します。
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法の基本的な情報を解説します。
電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法とは、法人や個人事業主に対して法律により保存義務があるとされている国税関係帳簿書類を、電子データとして保存できるように定めた法律です。
同法律により、税法上保存が必要な帳簿や関係書類は保存要件を満たすことで紙ではなく電子データで保存することが可能になる、あるいは電子データでの保存が義務付けられています。
電子帳簿保存法の保存区分には、次の3つがあります。
- 電子帳簿など保存【希望者のみ】
パソコンなどで自ら作成した国税関係帳簿や国税関係書類を、電子データのまま保存することが可能です。例えば会計ソフトで作成した仕訳帳やパソコンで作成した請求書などが対象となります。
- スキャナー保存【希望者のみ】
決算関係書類(貸借対照表や損益計算書など)以外の国税関係書類(紙の領収書・請求書などの取引関係書類)は、スマホやスキャナーで読み取った電子データで保存が可能です。
- 電子取引データ保存【法人・個人事業者は対応必須】
電子データでやり取りした注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などの取引関係書類は、そのまま電子取引データとして保存する必要があります。
電子帳簿保存法の対象企業と保存要件
電子帳簿保存法は、規模、業種に関わりなくすべての企業、個人事業主が対象です。真実性の確保と可視性の確保のため、保存要件が定められています。主なものを紹介します。
- 電子帳簿など保存の主な要件
- データの訂正や削除を行った場合にその記録が残るシステムを利用する(優良な電子帳簿のみ※)
- システム概要書・システム基本設計書など、システムに関連する書類を備え付ける
- 電子計算機・プログラム・ディスプレイおよびプリンターについてこれらの操作説明書を備え付ける
- 定められた条件に従った検索ができるようにする
詳しくは、国税庁の資料をご覧ください。
※ 優良な帳簿とは、「最初の記録段階から一貫してコンピューターを使用して作成している」「システム関係書類など(システム概要書や操作説明書など)の備付けがある」など一定の要件を満たした帳簿のことです。詳しくは下記をご参照ください。
- スキャナー保存の主な要件
- 解像度が200dpi相当以上であり、赤色、緑色および青色の階調がそれぞれ256階調以上であること
- 保存期間を通じて記録が変更されていないことを証明するタイムスタンプを付与すること
詳しくは、国税庁の資料をご覧ください。
- 電子取引データ保存の要件
- 「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムでの授受・保存」「改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守る」などの改ざん防止措置を行う
- 「⽇付・⾦額・取引先」で検索できるようにする
- ディスプレイ・プリンターなどを備え付ける
詳しくは、国税庁の資料をご覧ください。
電子帳簿保存法の対象
電子帳簿保存法の対象となる主な書類は次のとおりです。
- 電子帳簿など保存の対象書類
国税関係帳簿:仕訳帳、総勘定元帳、売掛帳、買掛帳、現金出納帳、固定資産台帳など
※ 前述のとおり、一定の要件を満たした「優良な帳簿」と「その他の帳簿」に分けられ、優良な帳簿には税の優遇措置があります。
決算関係書類:貸借対照表、損益計算書、棚卸表など
取引関係書類:注文書、見積書、契約書、領収書など
- スキャナー保存の対象書類
紙で作成・受領した以下のような取引関係書類
契約書、納品書、請求書、領収書、見積書、注文書、検収書など
- 電子取引データ保存の対象書類
電子データでやりとりを行った以下のような取引関係書類
注文書、契約書、見積書、領収書、送り状など
電子帳簿保存法の対象書類について詳しくは、「電子帳簿保存法の対象書類とは?一覧で紹介」をご覧ください。
電子帳簿保存法の改正で変わること
電子帳簿保存法の、2024年改正の概要を解説します。
電子帳簿など保存に関する主な改正事項
申告所得税・法人税について「優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置」の適用を受ける場合の、対象帳簿の範囲が見直されました。
見直し前は「仕訳帳」「総勘定元帳」「その他必要な帳簿(すべての青色関係帳簿)」でしたが、見直しにより「その他必要な帳簿」はすべての青色関係帳簿ではなく、以下の記載事項に係るものに限定されました。
「その他必要な帳簿」における記載事項 | 帳簿の具体例 |
---|---|
売上げ(加工その他の役務の給付など売上げと同様の性質を有するものを含む。)その他収入に関する事項 | 売上帳 |
仕入れその他経費(法人税は、賃金・給料・法定福利費・厚生費を除く。)に関する事項 | 仕入帳、経費帳、賃金台帳(所得税のみ) |
売掛金(未払加工料その他売掛金と同様の性質を有するものを含む。)に関する事項 | 売掛帳 |
買掛金(未払加工料その他買掛金と同様の性質を有するものを含む。)に関する事項 | 買掛帳 |
手形(融通手形を除く。)上の債権債務に関する事項 | 受取手形記入帳、支払手形記入帳 |
その他の債権債務に関する事項(当座貯金を除く。) | 貸付帳、借入帳、未決済項目に係る帳簿 |
有価証券(商品であるものを除く。)に関する事項(法人税のみ) | 有価証券受払い簿(法人税のみ) |
減価償却資産に関する事項 | 固定資産台帳 |
繰延資産に関する事項 | 繰延資産台帳 |
スキャナー保存に関する主な改正事項
保存要件などが、主に次のように改正されています。
- 解像度・階調・大きさに関する情報の保存要件の変更
改正後は、「解像度・階調・大きさに関する情報」の保存は不要となりました。ただし、スキャナーで読み取る際に守る必要のある解像度(200dpi以上)や階調(原則としてカラー画像)などの要件自体には変更がないため、注意が必要です。
- 入力者など情報の確認要件の変更
スキャナー保存時の記録事項の入力者や、監督者に関する情報の確認要件は廃止となりました。電子取引データ保存においても同様です。 - 帳簿との相互関連性の確保に関する変更
帳簿との相互関連性の確保が必要な国税関係書類は、「重要書類」に限定され、「一般書類」のスキャナー保存については、相互関連性の確保が不要となっています。
スキャナー保存について詳しくは、「電子帳簿保存法に対応したスキャナー保存とは?そのポイントを解説」をご覧ください。重要書類・一般書類の違いについても紹介しています。
電子取引データ保存に関する主な改正事項
主には次のような改正事項があります。
- 検索機能のすべてを不要とする措置の対象者の見直し
検索機能が不要となる対象者範囲が拡大されました。改正前に検索機能が不要とされる対象者は基準期間の売上高が「1,000万円以下」でしたが、改正後は「5,000万円以下」となりました。
また検索機能が不要となる対象者として、「電子取引データをプリントアウトした書面を整理して提示・提出できる保存義務者」が追加されています。
- 宥恕措置の廃止
令和4年度税制改正で実施された「宥恕措置」は、適用期限(令和5年12月31日)をもって廃止となりました。これまでは紙で印刷したものを原本として保管できましたが、令和6年1月1日以降は電子取引に関する取引情報については原則データのみでの保存となり、電子帳簿保存法の要件に従った保存が求められます。 - 新たな猶予措置
新たな猶予措置が設けられたことにより、以下の要件を満たしている場合には、改ざん防止や検索機能などの要件を満たさなくても、当面の間は許容されます。
- 所轄税務署長が相当の理由があると認める場合
- 税務調査など求めに応じて、電子取引データのダウンロードや電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出ができる場合
電子帳簿保存法への対応方法
電子帳簿保存法の中で「電子帳簿など保存」と「スキャナー保存」は任意となっていますが、「電子取引データ保存」は原則義務化されました。そのため、「電子取引データ保存」に対応し、法令を順守することが最優先です。
法的に義務付けられている取引状況を把握する
法令に対応するため、まずは、電子取引と見なされる取引の洗い出しを行うことが求められます。電子取引に該当する例としては、以下のようなものがあります。
- 電子メールを介しての、注文書や請求書、領収書などのやり取り
- インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書など
- インターネットのホームページに表示された請求書や領収書などのスクリーンショット
- クラウドサービスを利用した、電子データ化された請求書や領収書
- クレジットカードなどキャッシュレス決済の明細データ
- EDIシステムを利用した取引
など
保存要件の確認
電子取引データ保存において定められている保存要件を確認します。真実性や可視性を確保するために、「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムでの授受・保存」「改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守る」などの改ざん防止措置を講じる、「⽇付・⾦額・取引先」で検索できるようにするなどの、対応が必要です。
こ電子取引データ保存に関する保存要件については、「電子帳簿保存法に対応し請求書を電子データ保存する際知っておくべき基礎知識」でも紹介していますので、ご参照ください。
法令に沿った処理が可能なツールの選定・運用体制の見直し
保存要件を満たすためには、対応可能なシステムの導入や運用体制の見直しが必要となります。例えばタイムスタンプや訂正削除履歴が残るシステムの導入とともに、電子データとして保管するための業務フローの確立が求められるでしょう。
これまでは紙での保存が認められていた書類についても、データ化という作業の発生が予測されます。それを効率化するツールの導入も検討したいところです。
業務体制を整備して電子帳簿保存法改正に備えよう
電子帳簿保存法の改正は、デジタル化が進む社会や企業のDX推進への要求に従うものであり、すべての事業者が対象となります。改正に伴い2024年1月からは電子取引データ保存に関わる項目が強化されており、原則電子データによる保存が義務付けられました。一部、宥恕措置が設けられてはいますが、いずれは例外のない対応が求められます。まだ着手できていない場合には、早急に電子帳簿保存法の要件を充足するシステムや、その運用体制を整えるために役立つツールの導入を検討する必要があります。
例えば、紙の書類のデータ化に伴う負担を大きく軽減する、AI-OCRの活用もおすすめです。AI-OCRを使用することで、領収書・注文書・請求書の内容(取引年月日、取引金額、取引先など)を面倒な設定なしで高精度にデータ化し、会計システムや販売管理システム、経費精算システムなど電子帳簿保存法対応のシステムによる、保管・管理を容易にします。
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