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適切な帳票管理とは?企業活動の円滑化に役立つポイントを紹介

公開日:2024 / 1 / 19

企業活動において、請求書、契約書、収支計算書など日々多くの書類が作成されます。これらの取引や企業経営に関連した書類の総称が帳票です。このような帳票を適切に管理することは、組織内外での情報共有や、外部監査、法的要件を満たすためなどに重要な役割を担います。

今回は帳票の基本的な情報とその管理方法、帳票管理のポイントを解説します。

帳票とは

帳票は、取引や企業経営において作成される、帳簿と伝票を合わせた書類の総称です。一般的な伝票類のほか、企業の取引において取引が完了したことを証明する会計関連の「証憑書類」も含まれます。

証跡となる記録として、また情報の伝達としての役割を担う書類で、経営状況の客観的な根拠となり、取引内容やお金の流れを確認することが可能です。帳票のなかには、確定申告書類の作成時に必要にされるものもあります。

以上のように重要な書類で、適切に管理することが重要です。

帳票の種類と役割

帳票の基本となる帳簿と伝票、証憑書類について種類と役割を解説します。

  帳簿

帳簿は会社で行われる取引を記録する書類です。帳簿と呼ばれるものには、以下のような種類があります。

  • 総勘定元帳:会計上のすべての取引を項目ごとに記録する総合的な帳簿
  • 仕訳帳:日付順に取引を記録する帳簿
  • 現金出納帳:現金の収支を記録する帳簿
  • 売掛帳・買掛帳:それぞれ、自社が他社に売掛た商品やサービス、または自社が他社から買い掛けた商品やサービスの情報を記録する帳簿
  • 固定資産台帳:会社の固定資産(建物、設備、車両など)の取得や売却、減価償却などの情報を記録する帳簿
  • 決算書:一定期間内の収益と費用、純利益などをまとめた財務報告書

  伝票

伝票は取引のたびに作成され、帳簿の内容を証明する書類です。主な種類としては、以下のようなものがあります。

  • 入出金伝票:金銭の出入りを記録
  • 振替伝票:現金以外の取引について記録

  証憑書類

証憑書類は取引が完了した事実を示す証拠となる書類です。会計に関連するものには、以下のような書類があります。

  • 注文書:品名や金額、納期など注文内容を提示
  • 見積書:納品物の内容や金額、納期などの条件を提示
  • 請求書:納品物の対価として金銭の支払いを請求
  • 納品書:商品やサービスの納品を証明
  • 領収書:商品やサービスに対して料金が支払い済みであることを証明
  • 棚卸表:ある時点での在庫数

帳票の管理方法

帳票は日々の企業活動のなかで、多数発行されます。帳票の適切な管理を行うことは、企業経営の健全性を示すうえでも重要です。帳票の管理方法について解説します。

  保存期間

帳票の保存期間は、法律によっても異なります。

下表のとおり、法人税法上では取引の過程で発生した書類は5年間の保存、帳簿や決算書類、入出金を裏付ける帳票は7年間の保存が義務づけられています。ただし現金預金取引等関係書類については、前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の事業所では5年間の保存で問題ありません。

保存が必要なもの 保存期間
帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など 7年
書類 決算関係書類 損益計算書、賃借対照表、棚卸表など 7年
現金貯金取引等関係書類 領収証、小切手控、貯金通帳、借用証など 7年
その他の書類 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) 5年

※ 前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の方は、5年

一方、会社法においては帳簿書類等の保存期間は10年間と定められています。特に会計帳簿については、法人税法の規定にかかわらず10年間の保存が必要です。会社法で特に定められていない領収書や請求書などの書類は、税法に従います。

企業にとって重要な書類である決算書、申告書、総勘定元帳、定款、登記関連書類、免許許可関連書類、不動産関連書類、契約書、申請書、届出書などの帳票は、保存期間の定めがない場合でも、経営にかかわる重要書類として永久的に保存するのがおすすめです。

  管理形式

これまで帳簿書類の保存は、原則として紙媒体で行うことが求められてきました。そのためパソコンなどで作成された帳簿書類も紙で保存する必要がありました。

近年は電子化によるデータ管理が推奨されており、電子帳簿保存法では、電子取引におけるデータ保存義務やスキャナ保存制度を利用した電子データ保存などについて規定されています。

昨今、電子申告が一般的になっていることもあり、多くの企業では手書きではなく会計・税務申告ソフトを使用して申告書を作成しています。電子帳簿保存法のもとでは、パソコンや専用システムなどを使用して作成された帳簿書類については、特定の要件を満たしたうえで、紙媒体ではなくサーバー、DVD、CDなどに電子データで保存する必要があります。

また、電子帳簿の場合は紙での保存義務が免除となり、あらためてプリントアウトする必要がありません。

帳票類の電子データでの管理については、電子帳簿保存法も含め、次に紹介する各法律で定められています。

  帳票のデータ管理に関する法律

  • 電子帳簿保存法
    電子帳簿保存法は、帳票を電子化した場合の保存期間と方法を定める法律です。先にもあげたように企業や組織は帳簿書類を一定の期間保存する必要がありますが、この法律はその際に電子データで帳簿を保存する場合の要件や手続きを規定しています。

    電子帳簿保存法で定められたデータ保存の方法として、以下の3つがあります。

    • 電子帳簿等保存電子データで作成した帳簿書類を、電子データのまま保存します。
    • スキャナー保存紙で受領した書類を、スキャナにより電子データ化して保存します。
    • 電子取引データ保存電子的に受領した取引情報を、電子データとして保存します。

    電子帳簿保存法は社会の変化に伴い改正が重ねられてきました。2024年1月からは電子取引データ保存に関し、決められた保存方法にもとづきデータのまま保存することが義務づけられます。

    2024年1月改正電子帳簿保存法宥恕期間終了に伴い、帳票の電子化を進める必要性が生じました。詳しくは次の記事をご覧ください。
    > 「請求書をデータ化する方法は?改正電子帳簿法の施行で何が変わる?」

  • 電子署名法
    電子署名法の正式名称は「電子署名及び認証業務に関する法律」で、2001年に施行されました。電子署名法では、デジタル文書における認証や署名の概念を定義し、法的に有効な契約や文書の作成を可能にしています。つまり手書きの署名や押印と同じく、電子署名を付与した電子データについては契約の有効性や証拠力が認められるというものです。

    電子署名法により、「本人が署名していて内容が改ざんされていないこと」が証明できる電子署名が付与された電子データであれは、書面と同様に正当性が証明できる文書だと認められます。

    オンラインによる取引、契約が浸透していくなかで、企業活動の柔軟性を高めていくことにもつながるでしょう。

  • e-文書法
    「e-文書法」とは企業や個人事業主などの事業者に対し、従来紙での保存が義務づけられていた書類を、電子データで保存することを容認する法律です。e-文書法は、2005年4月1日に施行されました。

    e-文書法は「電子文書法」とも呼ばれ、実際には「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の2法の総称です。

    e-文書法の施行によって法人税法や会社法、商法、証券取引法など約250の法律において保管が義務づけられていた紙の書類での保存を、電子データで保存することが可能となりました。

    電子帳簿保存法では、財務省・国税庁で管轄される「国税関係帳簿書類」についての電子データ化・保存方法の特例を定めていますが、e-文書法では紙での保管が義務づけられていた広範囲にわたる文書・書類を電子データ化することを認めています。

    紙の文書・書類を電子データ化する場合は、次の記事をご覧ください。
    > 「OCRで伝票業務を効率化!帳票OCRの機能や導入効果から導入フローまで解説」

帳票管理のポイント

帳票管理のポイントは、組織内で効率的に情報を収集、整理、保存し、必要なときに必要な情報に間違いなくアクセスできるようにすることにあります。主なポイントは以下のとおりです。

  • 一貫性のあるファイリング

    日付、カテゴリー、重要度などの情報についてルール決めを行い、一貫性のあるファイリングシステムを全社的に共有することで保存書類の混乱を防止します。業務に際して必要な書類を迅速に探し出せ、常に正しい場所に保管されるようになります。

  • デジタル化の導入

    紙の帳票管理に比べて帳票管理システムでの電子帳票管理は、検索性、閲覧性に優れ、業務効率を向上できます。帳票は紙での保存が原則とされてきましたが、法改正により、電子化が推進されています。将来的な管理負担軽減を視野に入れ、電子化への移行を進めていく必要があるでしょう。

  • 法令遵守の徹底

    保存期間、帳票管理に関する各種要件を満たし、法令に従った処理が行われていることが重要です。先に示したように帳票の種類、形式によって保管の方法が決められています。定められた規則に沿って、提出が求められたときは即時に対応できるよう整備しておきます。

  • 保全とセキュリティ管理

    情報の散逸、損失がないよう日々保全を行うことが大切です。デジタル帳票の場合はバックアップを定期的に行うことで、データの損失を防止します。情報のセキュリティを確保するために物理的な保管場所への出入り制限や、データへのアクセス制限を行うなど、適切なセキュリティ対策を実施する必要があります。

  • 監査とトレーサビリティ

    帳票の変更やアクセス履歴を監査し、トレーサビリティを確保します。誰がいつ何のためにどのような作業を行ったかを明確に追跡できるようにすることで、不正行為や情報の書き換えを防止できます。

  • ワークフローの最適化

    帳票管理に関するフローを策定し、すべての帳票が正しく管理されるよう整備が必要です。

    例えば帳票が届いた際、種類によって決められた担当者に提出し、受け取りをシステムに登録するルールを定めます。デジタル化についても、受け取った帳票をスキャンなどによりデジタル化し、システム上で帳票を請求書、領収書などのカテゴリに自動分類できるよう設定を行うといった流れを構築します。帳票の種類によって異なる承認プロセスや処理フローを設定し、必要な人や部署に通知するワークフロー体制の整備も必要です。

  • 定期的な棚卸の実施

    帳票管理の煩雑化を避けるためには法律で保管期限が決められているもの以外について、定期的に帳票の棚卸しをして、使われなくなった帳票や不要な帳票を整理する必要があります。特に紙の帳票は物理的なスペースを有効使用するためにも、サイクルを決めて処理を行うことが求められます。

日々生成される帳票を正しく管理しよう

帳票は毎日いたるところで作成され、日々増加の一途をたどります。帳票管理についてのルール決めがなされていないと、必要な情報が埋もれてしまったり、法令にもとづいた保管がなされなかったりする恐れがあります。これまでは紙ベースでの管理が基本とされてきましたが、時代の変化とともに一部の帳票を電子化できるようなりました。今後はこうした流れがますます加速することが予測されます。企業活動の円滑化に向け、帳票管理の見直しを図りながら、適正化と業務効率の向上を目指していくことが求められます。

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