ノウハウ

OCRを導入するステップと導入前に知っておくべきこと

公開日:2023 / 11 / 27更新日:2024 / 1 / 19

ペーパーレス化の推進により、OCRを導入する企業が増えてきました。これからOCRを導入しようと検討している企業も多いでしょう。一方でなぜOCRが必要なのかわからない、便利さを十分イメージできていないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。

今回は、OCRを導入するステップとOCRでできること、注意点や導入のメリットなどOCRについて幅広くご紹介します。近年OCRはAIの活用により進化しています。従来のOCRのイメージが大きく変わるかもしれません。

OCRを導入するステップ

OCR導入のポイントは、目的を明確にすることです。何のためにOCRを導入するのか、どのような業務のどのような書類を電子化したいのかを明確にすることで、適切なOCRを選べます。

OCRを業務に導入する一般的なステップを紹介します。

  1. 現状把握
    現在業務で利用している書類・帳票について、次のような項目を確認します。
    • 紙で運用している業務はどのようなものがあるかの洗い出し
    • 業務が発生するタイミング(その業務は年中一定してあるのか、期初や期末、年度の初めなど、一時期に集中して発生するのか)の確認
    • 種類と書式の確認
    • 月当たりの処理枚数と処理時間の計算
    • 処理を行っているスタッフの人数と作業時間の計算

      OCRの導入は業務効率化やペーパーレス化の一環で行うことも多いでしょう。その場合、業務効率化やペーパーレス化を行う前に業務フローや帳票の整理・見直しも行います。それによって不要な業務をなくし、書類や帳票を整理して無駄な書類や帳票をなくせます。

      業務フローの無駄を省くことで、ある程度の業務効率化につながります。その後でOCRを導入することで、より大きな業務効率化が可能です。

  2. 対象業務の選定と導入計画の策定

    どの部署のどの業務から導入するかを選びます。

    最終的に全社に導入する予定でも、最初は一部の書類や帳票の処理から始めると混乱を招きません。いわゆる「スモールスタート」です。まずは一部の帳票や部署で導入効果を検証したり業務フローの見直しを行ったりした後で、全社に展開します。

    導入する場所を選んだら、導入時期を決定し、導入計画を策定します。

  3. OCRツールの選定

    導入するOCRツール(ソフトウェア)を選定します。必要な機能を明確にするため、次のようなポイントをチェックします。

    • OCR処理が必要な書類や帳票の種類
    • OCR処理を行う書類や帳票の一月当たりの枚数
    • OCR処理を行う書類や帳票の文字は手書きかPC入力されたものか
    • 書類や帳票の項目、バーコードやチェックマークの有無
    • OCR処理後に、抽出したテキストをどのシステムにどう連携するのか、OCR処理した原本の書類や帳票をどこに保管・管理するのか
  4. スキャナー・複合機の選定

    OCRツールと組み合わせて使うスキャナー・複合機を新しく選定する場合には、次のようなポイントをチェックしましょう。

    • 自社で取り扱っている帳票のサイズに対応しているか
    • 一度にセットできる枚数が、自社の処理枚数に適しているか
    • OCRに適して解像度(300dpi以上)でスキャンできるか
    • 1分当たりにスキャンできる枚数が、自社の処理枚数に適しているか
  5. OCRツールとスキャナーの設定

    OCRツールでは、帳票の読み取り範囲や出力フォーマットの指定を行い、スキャナーでは、出力先や解像度など、用途に合わせた設定を行います。

  6. OCR処理のテスト
    次のようなポイントをチェックし、読み取り精度を検証します。
    • 設定や作業手順の不備がないか
    • 読み取り時間は適切か
    • 出力フォーマットが連携先のシステムに合っているか
    • 必要な精度で読み取り、認識してデジタル化できているか
  7. 導入・運用開始

    導入し、運用を開始します。

    導入時には、各部署の担当者にOCRツールの利用について教育を行います。スモールスタートの場合、最初は一部の書類や帳票の処理から導入するので、導入する部署の担当者に教育が必要です。その後結果の検証・改善を行ったら、他の部署の担当者には、その内容を反映した教育を行い、スムーズな運用につなげていきます。

  8. 検証
    次のようなポイントで、導入効果を測定します。
    • OCR処理の導入により削減できたタスクの数
    • OCR処理の導入により削減できた従業員の作業時間
    • OCR処理の導入により削減できたコスト
  9. 全社展開
    最終的に、OCRツールを全社に展開していきます。

OCRを導入する際に知っておきたいこと

かつてのOCRツールには「あまり精度が高くない、実用的ではない」というイメージがありました。しかし現在のOCRツールは進化しています。

OCR導入の効果を上げるためにも、導入前にOCRに対するイメージを「今のOCRの実力」に合わせてアップデートしておきましょう。ここでは導入前に確認しておきたいことを紹介します。

  現在のOCRにできること

AIと組み合わせたAI-OCRは、より精度が高く、高機能になっています。

  • 表や図が入った文書も認識可能

    1つのページに文字だけでなく図や表がレイアウトされていても、画像と文字を分離して認識し、テキストとして抽出できます。

    さらに精度の高い表認識技術とAI技術の組み合わせで、注文書などの表の明細行までデータ化が可能なツールも登場しています。

  • ファイル名を自動的に設定可能
    文字認識後、キーワードを抽出して自動的にファイル名をつけることができます。ファイル管理を効率化し、データをより利活用しやすい形で保存・管理することが可能です。
  • RPAと組み合わせることで業務の自動化が可能
    RPA(PCを使ったルーチンワークを自動化できるツール)と組み合わせて、文字入力・処理を自動化できます。たとえば、PDFファイルで受信した注文書をOCR処理してテキスト抽出し、業務システムに入力するという一連のフローをPRAに代行させることが可能です。
  • AI-OCRなら非定形の帳票も認識できる
    AI-OCRは非定型文書の認識も可能です。たとえば、たとえば明細行の数が毎回変わる場合や、取引先によって項目の記載場所が異なる場合であっても、必要な項目を自動的に判別して認識することもできます。
  • AI-OCRなら手書き文字も高い精度で認識できる
    従来のOCRでは手書き文字の認識は難しいとされていましたが、AI-OCRなら高い精度で認識し、テキスト抽出できます。

従来のOCRとAI-OCRの違いについては、次の記事も参考にしてください。

  OCRツールの導入時に確認しておくべきこと

OCRツールの導入前には、次のような点に注意が必要です。

  • 認識精度は100%ではない
    精度が高くても、誤認識が0%になることはありません。認識結果が正しいかどうか、最終的に人の目による確認を行う必要はあります。しかし、OCR処理によってデータ入力作業が不要になること、確認作業は最後の1回で済むことなど、業務効率化に大きく寄与することには違いありません。
  • さまざまなフォーマットの帳票への対応ができるか確認する
    現時点で必要なフォーマットの帳票の読み取りに対応できるかの確認はもちろんですが、将来的に他の帳票の処理が必要になる可能性もあります。さまざまなフォーマットに対応可能かどうかの確認もしておきましょう。
  • 既存のシステムと連携できるか確認する
    連携できるシステムや出力できるデータ形式は、製品ごとに異なります。既存のシステムと連携できるものが必要です。
  • ベンダーのサポート体制を確認する
    導入時だけでなく、導入後のサポートはどの程度あるのか、またどのような内容かを確認します。
  • OCR処理以外の機能について確認する
    OCRツールによっては、既存のシステムとの連携、ファイル名自動設定など、さらに業務効率化が可能な機能を持つものもあります。自社に必要な機能、あればよりよい機能など、予算とのバランスも考慮し選定しましょう。
  • 実際の環境でトライアルを行う
    期間限定で無料トライアルができるものもあります。無料トライアルを積極的に利用し、読み取りたい書類や帳票に対応しているか、必要な機能があるかなどをチェックしましょう。

OCRツールの選び方は、次の記事でも紹介しています。ぜひ、ご覧ください。

OCRを導入することで得られるメリット

OCRの導入のメリットを確認しておきましょう。主なメリットを紹介します。

  業務効率化の実現

OCRの導入で、データを手入力する作業やダブルチェックが不要になり、業務負担を大幅に軽減できます。また手作業が減るので、人的ミスや人件費(コスト)も削減可能です。紙の書類や帳票を保存する必要がなくなり、ペーパーレス化の促進、ペーパーレス化による一層の業務効率化にもつながります。

  検索性の向上

紙の書類や帳票、PDFファイルをテキストデータ化することで、それらの内容を検索できるようになります。また検索が可能になることで、大量のデータがあっても管理しやすくなります。

  データ共有・利活用促進

テキストデータ化することで、他のアプリケーションでも利用しやすくなり、データの共有や利活用が容易になります。RPAや他の基幹システムとのデータ連携により、作業を自動化することも可能です。

  コア業務に集中できる

データ入力やチェックという単純作業を自動化することで、作業時間を大きく削減できます。削減できた時間はコア業務やクリエーティブな業務に充てることが可能です。

OCR導入のメリットは、次の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。

OCRの導入は業務効率化をはじめさまざまなメリットを生む

従来は、OCRを導入するのは紙の書類や帳票を大量にデータ化したいときだけと考えられていました。

現在でも、紙の書類のデータ化はOCR導入の大きな目的の1つです。しかし、それだけではありません。紙の書類や帳票、PDFファイルをデータ化することで可能になる業務効率化、データの利活用など、OCRの導入は企業にとってさまざまなメリットがあります。

パナソニック ソリューションテクノロジーではさまざまなOCRソリューションをご用意しており、用途に合わせたOCRを選んでいただけます。ぜひお気軽にご相談ください。

OCR導入により可能になるデータ利活用の例については、次の記事をご覧ください。

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