ノウハウ 活用例

AIによる文字認識とは?
利用のメリットと導入のポイントを解説

公開日:2024 / 6 / 21

現代の最先端技術の代表であるAI(人工知能)は今やあらゆる分野で実用的に活用されていますが、AI OCRと呼ばれる文字認識技術もその一つです。従来の OCR(光学文字認識)にAI技術を融合させることにより、読み取り精度や処理能力を各段に進化させています。

今回はAIを用いた文字認識がもたらすメリットや特長、業務における活用例と導入のポイントを解説します。

AIを活用した文字認識とは

AIを活用した文字認識(AI OCR)とは、従来の OCRに AI技術を融合させた最先端の文字認識技術です。画像データから文字を抽出する従来のOCR は、手書き文字や複雑なレイアウトの文書の場合など、条件によっては読み取り精度が低くなるという課題がありました。

AI-OCR はAI 技術を活用することで、高い文字認識精度を始め従来の OCR を大きく上回る性能を実現しています。クセのある手書き文字やフォーマットが異なる非定型の帳票なども、高い精度で読み取りが可能です。

AI-OCRの活用メリットについては次の記事で紹介しています。ぜひご覧ください。
> 「AI-OCRを活用することでどのようなメリットがあるのか?活用シーンから紹介」

また、従来のOCRとAI-OCRの違いについては、次の記事をご覧ください。
> 「OCRとは? ~「OCR技術」と「AI-OCR技術」の違い ~」

AIによる文字認識と従来の文字認識の違い

AIによる文字認識と従来の文字認識は、以下の点で大きく異なります。

  認識精度

  • AIによる文字認識

    深層学習を用いることで、従来の文字認識よりも高い精度を実現しています。深層学習では複数の層からなるニューラルネットワークを用いて、複雑なパターンや特長をより正確に学習することで、認識の精度を向上します。手書き文字やかすれた文字、傾いた文字、また複雑なレイアウトの文書も正確に読み取ることが可能です。

  • 従来の文字認識

    従来の文字認識では、画像や文書などのデータから特定のパターンやテンプレートを見つける、テンプレートマッチングという手法が用いられています。この手法は単純な形状やパターンの検出には有効ですが、複雑な変形やノイズが多い場合には精度が低下することがあります。

    そのため手書き文字やかすれた文字、傾いた文字などは読み取り精度が低くなりがちです。

  汎用性

  • AIによる文字認識

    学習済みの種類の帳票であれば、さまざまな書式に対応できます。

  • 従来の文字認識

    言語やフォント、書式の影響を受けやすく、事前に読み取り用のフォーマットを作成済みの帳票にしか適用できません。

  学習能力

  • AIによる文字認識

    バージョンアップなどで定期的に精度改善がなされます。使い続けるほど、継続的に精度が向上します。

  • 従来の文字認識

    学習機能がないため、認識精度を向上できません。

  設定の手間

  • AIによる文字認識

    学習済みの種類の帳票であれば、さまざまな書式の文書も事前設定なしで読み取りができます。

  • 従来の文字認識

    書式が異なる非定型の書類は、スキャナーで読み取った画像から文字として読み取る範囲を、都度レイアウト上で指定する必要があります。

AIによる文字認識の活用例

AI-OCRを使うことでメリットが得られるケースを紹介します。

  複数の書式が混在している大量の紙の書類を処理する場合

従来のOCR技術では、事前に書類のフォーマットを統一したり手作業でスキャン設定を調整したりする必要があります。そのため大量の書類の中に書式が異なる書類が混在している場合は、より膨大な手間と時間がかかります。

AIによる文字認識は、事前学習によってさまざまなフォーマットの書類に対応できるため、事前設定や準備の手間の大幅な削減が可能です。

  特に正確性が求められ確認・修正作業に時間を要する場合

さまざまAI-OCRは高精度での読み取りが可能なため、読み取り後の確認・修正にかかる作業量の軽減が期待できます。

例えば法務関係の書類や医療関係の書類、国税関係書類など、特にデータの正確性が求められるような重要な書類の処理において、一層活用効果が高くなるでしょう。

なお、契約書や請求書、領収書などの国税関係書類は、紙でのやり取りであった場合も、電子帳簿保存法により電子データでの保存(スキャナー保存)が認められています。AI-OCRは、適切にスキャナー保存する際にも大きく役立ちます。

電子帳簿保存法やスキャナー保存について詳しくは、次の記事をご覧ください。

  手書き文字の認識が必要な場合

従来のOCR技術では、手書き文字の認識精度が低く、誤認識が発生しやすいという課題がありました。しかしAIによる文字認識は、手書き文字の学習データを用いることで、まだ手書きで作成されることも多い履歴書やアンケート、議事録、請求書や領収書といった取引関係書類などについても、高精度な認識を実現できます。

  項目の自動抽出が必要な場合

AIによる文字認識では単に文字を認識するだけでなく、書類中の項目を自動で抽出できます。例えば請求書であれば金額や日付、取引先情報、領収書であれば品名や金額、日付、購入先情報など、必要な項目を自動で抽出することで、データ整理の作業を大幅に効率化が可能です。

書類から特定の情報を抽出する必要がある場合に、手作業によるデータ抽出の時間を削減し、業務効率を向上できます。

AIによる文字認識(AI-OCR)導入のポイント

AIによる文字認識を導入する際に押さえておきたいポイントを紹介します。

  AI-OCRには大きく3つの種類がある

AI-OCRには3つの種類があります。それぞれの特長を表にまとめました。

種類 概要 ポイント 対応可能な帳票の例
汎用×定型フォーマット型 読み取る帳票の種別は汎用で、フォーマットは定型のタイプ 定型フォーマットを使うため、抽出精度は高くなります。ただし、事前の設定準備に時間がかかります。 アンケート、申込書、問診票、勤怠表など
汎用×非定型フォーマット型 読み取る帳票の種別は汎用で、フォーマットは非定型タイプ 全文認識は可能ですが、項目名の付与や特定箇所の抽出などはできません。 非定型なフォーマットの契約書、ホワイトボードのメモ、手書きのメモ、製品パッケージなど
業務特化×非定型フォーマット型 読み取る帳票の種別は特定種別で、フォーマットは非定型タイプ 導入時にAIへのフォーマット学習が済んでおり、事前学習なしに多岐にわたる帳票を処理が可能です。帳票の種類が限定される分、汎用×非定型フォーマット型と比べてコストを抑えられます。 注文書・請求書・領収書・納品書・見積書など

  AIによる文字認識(AI-OCR)導入の際のチェックポイント

導入の際にチェックしたいポイントについて、主なものを紹介します。

<読み取り精度>
AI-OCRの導入効果は、読み取り精度に大きく左右されます。実際の運用で想定される書類の種類、文字の大きさや書体、レイアウトなどを考慮し、十分な精度が確保されているか確認する必要があります。

一般的な確認方法は以下のとおりです。

  • 無料トライアルやデモを利用して、実運用に近い環境でテストを実施する
  • 導入企業の事例やレビューを参考にする
  • ベンダーに具体的な読み取り精度データや、自社の書類に特化した検証結果を提示してもらう

<設定・更新の容易さ>
AI-OCRを使いこなせるかどうかは、設定や更新の簡易性も重要な要素です。システムの操作性や使用者側に求められるスキルレベルを事前に確認する必要があります。

一般的な確認方法は以下のとおりです。

  • 無料トライアルやデモで、実際の操作画面を触ってみる
  • マニュアルやチュートリアルの充実度を確認する
  • 導入後のサポート体制やトレーニング内容を確認する

<サポート体制>
導入後、例えば「一部の文字や情報が認識されない」「複雑なレイアウトの書類が認識されない」といった認識精度の問題、「設定が複雑で困っている」「マニュアルが不十分で使い方がわかりにくい」といったシステム運用に関する問題、「処理速度が遅く業務効率が向上しない」「大量の書類を処理するのに時間がかかりすぎる」といった処理速度の問題など、トラブルが発生することも考えられます。

そういったトラブルに備え、迅速かつ適切なサポートを受けられる体制が整っているかも重要なポイントとなります。

一般的な確認方法は以下のとおりです。

  • 電話、メール、チャットなど問い合わせチャネルを確認する
  • サポート担当者の専門知識や対応実績を確認する
  • 導入企業向けコミュニティーやフォーラムの存在を確認する

<必要な機能>
読み取り精度に加えて、以下のような機能がれば業務効率化に大きく貢献します。自社業務でニーズのある機能について、事前のチェックが求められます。

  • 自動項目抽出:請求書や領収書などの項目を自動で抽出する
  • 多言語対応:日本語だけでなく、英語や中国語など複数の言語に対応している
  • 画像処理機能:傾きやゆがみを補正し、読み取り精度を向上する
  • データ連携機能:他のシステムと連携し、データ活用を促進する
  • セキュリティ機能:機密情報の取り扱いに関するセキュリティ対策が充実している

<導入コスト>
AI-OCR製品には初期費用、ランニングコスト、保守費用などのコストが発生します。予算とのバランスを見ながら費用対効果を検討することが大切です。一般的な運用コストは以下のとおりです。

  • 初期費用:システム導入費用、ハードウェア費用、コンサルティング費用など
  • ランニング費用:月額利用料金、年間ライセンス費用、データ処理費用など
  • 保守費用:システムアップデート費用、サポート費用など

<セキュリティ>
AI-OCRで処理するデータには機密情報が含まれる可能性があるため、セキュリティ対策の充実度が重要です。AI-OCRのセキュリティ機能には、以下があります。

  • データ暗号化:通信時、保存時のデータ暗号化
  • アクセス制御:利用者権限の設定
  • ログ管理:操作履歴の記録
  • 脆弱性対策:セキュリティパッチの迅速な適用
  • データの取り扱いに関する規程:プライバシーポリシー、情報セキュリティポリシー

<スケーラビリティ>
業務量やデータ量が増加した場合に、システムを拡張できるかどうか確認しておくと安心です。

業務量やデータ量が増加するケースの事例としては、新規事業の立ち上げや季節性の高いビジネスにおける繁忙期、法規制の変更に伴う書類作成や手続きの変更、社内のデジタル化の推進などがあげられます。

スケーラビリティに関して確認しておきたい機能としては、以下があります。

  • ユーザー数増加への対応
  • データ処理能力の拡張
  • 機能追加

AIによる文字認識(AI-OCR)で業務効率化を推進

近年のAI技術の発展により、従来のOCR技術を超えた高精度な文字認識が可能となりました。AI-OCRの導入は手入力作業の大幅削減、データ入力精度の向上、書類のデジタル化などさまざまな業務効率化を実現し、企業の競争力強化に貢献します。導入を検討する際は、今回紹介したようなチェックポイントを参考に自社のニーズに合致し、最も活用効果が得られるものを選ぶことが大切です。AIによる文字認識で業務プロセス改革を推進し、企業としての生産性を高めてはいかがでしょうか。

なお、紹介したように、AI-OCRは主に3種類あります。

パナソニック ソリューションテクノロジーでは、注文書・請求書のOCR処理を得意とする業務特化×非定型フォーマット型の「WisOCR for 注文書・請求書」と、さまざまな用途のOCR処理に対応した汎用×定型フォーマット型の「WisOCR」をご用意しております。

AI-OCRの導入を検討されている方は、お気軽にご相談ください。

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