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書類の電子化で期待できる効果とは?実施の流れと注意点もあわせて解説
公開日:2023 / 10 / 27更新日:2024 / 1 / 19
取引先や現場とのやり取りで手書きの帳票が多いと、ファイリングの手間が必要だったり、過去の帳票を探しづらかったりと面倒です。その後データとして入力し直す場合は、入力ミスも気になります。このような状況では、業務効率に課題を感じることも多いのではないでしょうか。
書類を電子化することにより、こうした課題が解決され、業務の効率化に役立ちます。今回は、書類の電子化で得られるメリットや、実施の手順、注意点について解説します。
書類の電子化とは
初めに書類の電子化についての考え方を解説します。
書類の電子化
書類の電子化とは、発行・保管された書類や資料などの紙媒体を電子媒体に変換することを指し、ペーパーレス化とも呼ばれます。具体的にはスキャナーやOCRなどを用いて、紙ベースの文書からテキスト情報を読み取ったり、PDFやJPEGなどのファイル形式へと変換したりする作業などがあげられます。
混同されがちな言葉にデジタル化があります。デジタル化とは、デジタル技術を活用して業務プロセスの効率化を図ったり業務品質を高めたりすることを目指す取り組みです。
一方で、電子化とは紙ベースの情報を電子媒体、つまり、デジタルデータ化する取り組みです。電子化したデジタルデータを業務プロセスの効率化などに役立てようとする取り組みがデジタル化ですので、電子化はデジタル化の取り組みの一部に含まれるといえます。
また、電子化は紙媒体を対象としていますが、デジタル化はアナログ情報全般を対象とし、より広範囲にわたります。
どのような書類を電子化すべきか
企業では日々書類が発生し、過去からの積み重ねで膨大な量が保管されています。一度に手をつけようとすると混乱を招く恐れがあるため、書類を電子化するにあたっては、優先順位をつけながら実施していく必要があります。
電子化すべき書類を考えるときに参考となる条件としては、以下のようなものがあげられます。
- 情報共有が必要とされる
- 外部での照会、閲覧が必要となる
- 膨大な書類のなかから検索される頻度が高い
- 同系統の書類が大量にあり保管に負担がかかる
電子化しておきたい書類の具体例は以下のとおりです。
- 顧客関連の書類
申込書、領収書、請求書、納品書、見積書、発注書など取引内容を具体的に示す書類や、業務契約書、継続的商品売買契約書、代理店契約書などを電子化することによって、クライアント対応の迅速化に役立ちます。 - プロジェクト関連文書
プロジェクト計画書、進捗報告書などを電子化すると、プロジェクトの目標、スケジュール、リソースなどの情報を集約し、関係者間で共有・更新が行えます。作業状況や成果を透明化してクラウド管理することで、社内外からの共有、閲覧が可能となるため、プロジェクトを効率的に進行できます。 - 社内文書
株主総会議事録、会社の定款、組織規程と手順書、社内技術資料、各種申請書類、会計帳簿・請求書などの証憑書類など、社内共有が必要となる文書については電子化することで、社員が必要な文書をすぐに検索できる、変更があった際のアップデートが容易に行えるなどの利点があります。 - 人事関連の書類
給与情報、雇用契約関連、保険関連の書類を電子化することは、社員情報や勤怠管理を行うシステムの導入に役立ちます。都度データを入力したり修正したりする必要がなくなり、人的ミスの発生を予防する効果も期待できるでしょう。そのほか、履歴書、業務委託契約書、入社承諾書、誓約書、雇用通知書、雇用契約書、人事考課決定調書、異動・昇進内申書、退職届などもデータ化しておくと、必要な際にスムーズに送付できるため、作業工数を削減できます。
書類を電子化するメリット
書類を電子化するメリットを説明します。
コストダウン効果
印刷、用紙代、書類の管理コスト、事務作業にかかる人件費などのコスト軽減につながります。
省スペース化の実現
ファイリングした書類の保管スペースが必要なくなります。保管期限を過ぎた書類の分類が容易になり、廃棄待ちの書類の管理場所も必要ありません。
情報共有スピードの向上
情報の検索性が向上します。また、情報共有の実現・進捗状況の可視化によって、業務遂行における問題点の特定が容易になり、適切な対策を迅速に実行できるようになります。
各種システム運用の効率化
電子化したデータは各種システムと連携しやすいため、ワークフローシステムを始めとする業務システムの導入がしやすくなります。AI-OCRやRPAとの連携で業務のワークフローの効率化、自動化ができるメリットがもたらされます。手書き書類の読み取りからシステムへの入力、さらに電子化された原本の保存・管理までがワンストップで自動化されます。
場所を選ばず情報にアクセスが可能
クラウドの活用により、業務で必要となる書類の閲覧や利用がどの場所からも可能となります。在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィス勤務といったテレワークや、リモートワークなど多様な働き方に対応しやすくなります。リアルタイムでの情報更新と共有が実現し、遠隔地同士の認識合わせに役立ちます。
企業の信頼性向上にも有効
書類を電子化するほかのメリットとして、企業イメージの向上があげられます。書類を電子化することで紙の使用量を減らせるため、環境保全に対する姿勢を社会に示すことができます。また、データを適切に管理・保護していることでBCP対策やコンプライアンス強化に努めていることも、対外的にアピールできます。
書類電子化の流れ
書類を電子化する手順を説明します。
書類の確認と選別
書類を確認し、電子化する必要がある書類の選別を実施します。これに先立ち、業務上で電子化を急ぎたい書類などの現状を把握する必要があります。作業にかかる期間、作業量を考慮しながら、優先順位を検討します。
解像度やデータ形式の確認
解像度は、必要な情報の視認性を保持しながらもファイルサイズを適切に抑えることが求められます。一般的には、400dpi程度であればPCでの閲覧やクラウド運用に適しているとされます。データ形式は情報の内容により、PDFやJPEGなどから選択しましょう。
スキャニング
スキャナーを使って書類のスキャンを実施します。その際、スキャナーの不具合の原因となるクリップやホチキスの針などを事前に外す必要があります。テープや汚れをできるだけ除き、クリーンな状態でのスキャンが理想的です。
OCR処理
スキャンした書類を単なる画像ではなく、テキスト情報として編集や検索が可能な状態にするためには、OCR処理が必要です。OCRソフトウェアを使用して、スキャンした画像をテキストデータに変換します。
ファイル管理
ファイル管理のルールを策定し、規則にしたがったファイル名を付与します。文書管理システムを導入することで、ファイル管理の運用ルールを浸透させやすくなるでしょう。ファイル管理に対応したOCRソフトウェアもあります。
検索キーワード、ファイルの保存場所、フォルダ階層など電子化された書類を最大限に活用できるよう管理することが大切です。
書類を電子化する際の注意点
書類を電子化する際の主な注意点について解説します。
電子化に関連する法律に留意する
電子化にあたり、文書保存などに関連する法律を確認する必要があります。
- e-文書法
e-文書法では、保存が義務付けられる文書について、電子データでの保存が認められることが規定されています。e-文書法は各法律を横断するため、会計帳簿や請求書などの証憑書類、株主総会議事録、会社の定款などカバー範囲が広いのが特徴です。
ただし、以下のような文書は対象から除外されることに注意が必要です。
例:緊急時など即座に閲覧を要する書類、各種証明書類など現物性が高い文書e-文書法に基づいて文書を電子化する場合には、電子化の申請や税務署長の承認などは特に必要ありません。
- 電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、国税庁が管轄する「国税に関する帳簿書類」について電子保存を認める法律です。該当する書類の電子化にあたり、保存要件にしたがった処理が必要となります。
なお、国税関係帳簿書類を電磁的記録により保存をする際、2022年4月1日以後は電子帳簿保存やスキャナー保存について、税務署長の事前承認が不要となりました。
セキュリティ対策を行う
書類の電子化にあたっては、紙ベースの管理とは異なる視点でのセキュリティ対策が必要です。
- アクセス制御
ユーザーごとのアカウントとパスワードによる認証、アクセス権の設定、アクセスログの管理を実施します。必要に応じて、二要素認証や生体認証などの認証要素の使用も検討します。 - バックアップと復元
定期的なバックアップを作成し、データの損失や破損に備えます。重要データのバックアップは、複数の場所やクラウドストレージに分散保存することでリスク回避策となります。
電子化に要する作業期間・負担を考慮する
企業が保有する膨大な書類の電子化には、相応の負担が生じることを理解しておくことが大切です。
- 計画的にプロセスを進める
取り組み計画、優先順位、電子化実施の範囲などをあらかじめ策定しておかないと、作業が滞り、挫折しやすくなります。どこまでの範囲をどの期間で終わらせるのかといった目標を定め、各プロセスにおける作業負担を考慮しながら着手する必要があります。 - コストの検討
ファイル管理システムやOCRソフトウェアを導入する場合は、導入費用や運用費などのコストが発生します。コストバランスを十分に検討しながら、ソリューション、サービスの選定を行う必要があります。 - 作業時間への理解
過去の膨大な書類を電子化して、今後有効活用できるようにフォルダや階層を整備するにはかなりの時間を要します。また、OCRに読み込ませる書類の解像度によっては、読み込みにかかったり、認識結果の確認修正に時間がかかったりする場合もあります。スケジュールを組む際には、作業者に時間的な圧迫がかからないよう注意しましょう。
紙媒体重視からの脱却を目指し書類の電子化を進めよう
社員が膨大な紙書類を処理するのに時間が費やされる状態では、企業としての生産性向上は望めません。業務効率を上げ、企業DXを推進していくうえで、電子化は避けて通れないプロセスです。
ただし無計画で着手してしまうと膨大な作業量を前に、挫折する恐れがあります。書類の電子化の要・不要をしっかりと切り分け、優先順位の高い分野から確実に進めていくことが求められます。
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