技術紹介 活用例
AI帳票OCRはどんなもので、何が期待できるのか
公開日:2023 / 5 / 31更新日:2024 / 1 / 19
クラウドサービスなどで業務の効率化が進む中、業務効率の向上を妨げる理由の一つとして、業務プロセスにおけるデータの活用方法があげられるのではないでしょうか。専用伝票に印刷された請求書や、メールに添付されたPDFなど、そのままでは業務システムに取り込んだり、データを適切に活用したりすることができません。そうした問題を解決する一つの方法がAI帳票OCRの活用です。
帳票OCRとAI帳票OCR
AI帳票OCRについて解説する前にOCRについて簡単に説明します。OCRとは、紙に書かれた文字を読み取ってコンピューターで扱うことができるテキストデータに変換するシステムです。日本の企業間取引ではまだまだ紙の帳票が多くあります。特に請求書や納品書などは経理システムに入力しなければなりませんが、紙であるがために人が手で入力しなければなりません。OCRを活用すれば、こうした紙帳票をテキストデータに変換することができます。
OCRという技術自体は決して新しいものではありません。従来は決まった記入用紙にガイドに従って数字を記入するようなもので、認識率もそれほどよいものではなく、業務で使うにはかなり多くの制約の中で利用するものでした。それを一変させたのがAI帳票OCRの登場です。
AIを搭載したOCRは、手書き文字も認識できるようになります。手書きにはくせが強い文字もありますが、AIはある程度の文字の崩れならば認識することができます。文字の一部がかすれていたり、消えたりしていても大丈夫です。また、OCRとRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を組み合わせることで、読み取ったテキストデータを自動でExcelへ転記したり、別のシステムに取り込んだりすることも可能です。
AI帳票OCRは特に手書き文字や非定型の帳票をテキストデータ化することに特化したシステムです。
AI帳票OCRと帳票OCRの特長
従来の帳票OCRとAI帳票OCRの大きな違いは、上記で説明したようにAIを搭載することにより文字の認識率が格段に高くなったことです。
従来の帳票OCRも手書き文字を扱うことはできましたが、読み取るにはさまざまな条件や制約がありました。しかしAIを搭載することで、比較的自由なスペースに書かれた手書き文字や、くせのある手書き文字の認識にも対応できるようになりました。
また、一部のAI帳票OCRサービスでは事前にフォーマット情報の登録、読み取り箇所の設定をせずとも帳票の種類を自動で判断して文字認識をすることができるようになり、事前準備作業も軽減されました。
帳票OCRの特長
- 活字やさまざまな文字種の読み取りに対応
さまざまなフォントの活字のほか、チェックマークやバーコード、QRコードの認識に対応しているものもあります。制限や条件付きではあるものの、手書き文字の認識が可能なものもあります。 - 罫線情報から帳票の種類を自動判定可能
事前にフォーマット設定をしておけば、以降は自動でフォーマットから帳票の種類を判断して文字認識をすることができます。
AI帳票OCRの特長
- 手書き文字の読み取りにも対応可能
AIを活用することで、高精度に手書き文字を読み取ることができます。例えば、展示会などで多用されるアンケートでは、選択項目はもちろん、記述エリアに書かれた手書き文字などもテキストデータに変換することができます。 - 帳票種別の自動判定
一部のAI帳票OCRツールでは、特定の帳票、例えば注文書や請求書だけに特化してAIに学習させることで、事前にフォーマット設定を行わなくても、AIが自動で帳票種別と読み取り箇所を判断してテキストデータに変換してくれます。
以上の特長を踏まえると、帳票OCRは活字の定型的な帳票の処理が多い場合に向いていると言えます。一方、AI帳票OCRはフリー欄に手書き文字の記載が多い場合や、帳票の種類は限られているが事前設定ができないほど膨大な種類のフォーマットを扱う場合におすすめと言えるでしょう。
AI帳票OCRで変わる社内業務
経理、人事、総務、営業など、AI帳票OCRで効率化できるバックオフィスの業務について見ていきましょう。
請求書処理など経理業務の効率化
経理部門では月末月初に業務が集中します。大量の請求書が月末に届き、それを債務管理システムや経理システムに入力し支払業務を行うのと並行して、自社の会計に反映させて経営会議資料を作成しなければならず、経理部門は時間との戦いという側面があります。そのため、データ入力を期限の中で行うために要員を確保しておかなくてはなりません。OCRの導入でこうした作業の負担や非効率な要員配置が軽減されるでしょう。
注文書、請求書は企業によってフォーマットは異なります。AI帳票OCRでは、これらの帳票に記載される項目・ラベルを判断して必要な値を抽出してデータ化します。例えば数量というラベルがあればその下にある文字は数値であるという具合にAIが判断します。このように設定における作業工数も大幅に削減することができ、手入力と比較して約40%の作業時間削減を見込むこともできるでしょう。
総務・人事部門は勤怠管理に活用
経理以外にも、例えば総務・人事部門では勤怠表のデータなども効率的にシステムに取り込むことが可能になります。特に客先に派遣されている場合など、勤怠表に先方の承認印などを必要とするケースでは、勤怠表をPDFで管理者に送付し、それをAI帳票OCRで読み込んだデータを勤怠管理システムに取り込む運用が可能です。もちろん、勤怠表を郵便やFAXで送って、紙媒体からOCRでデータ化するという運用も可能です。
営業部門やカスタマーサービスでも活用
AI帳票OCRは、営業部門やカスタマーサービスでも活用できます。例えば、申込用紙のデータを見ながら、システムに手入力する、Excelやスプレッドシートに転記するというような業務がなくなります。OCRから出力されたCSVデータを、Excelのマクロを利用して必要なフォーマットに編集することもできますので、さまざまなシステムで簡単に活用することができるようになります。
AI帳票OCRはペーパーレス推進に欠かせない
AI帳票OCRは、これまで紙で扱ってきた帳票類を単にテキストデータにできるというだけではなく、データ取り込みに必要な事前設計の簡易化や、手書き文字のデータ化など、オフィスでの多くの業務の効率化に貢献します。紙帳票の情報をテキストデータに置き換えることによって、データ入力業務などオフィスワークの効率化が見込めることは明白であり、OCRを活用した電子化の流れのなかで物理的な紙帳票は減っていくと考えられます。
ただしOCRの特性として、100%の読み取り精度は保証されない点には留意する必要があります。機能を確実に利用するには、読み取ったテキストデータをチェックする手順や運用の仕方を考えたうえで導入する必要があります。また、対象とする帳票に合わせて利用するOCRを選択することで、無駄なく活用することができます。最終的に全体の効率化を考えたうえでシステムの導入ができれば、大きな成果が期待できるでしょう。
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