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インボイス(適格請求書)制度とは?企業がすべき準備と対応

公開日:2023 / 11 / 27更新日:2024 / 1 / 19

2023年10月からインボイス制度が開始されました。制度導入に向けて準備を進めてきたものの、制度に対応した社内の業務フローがいまだ確立されていないケースもあるでしょう。

今回は、インボイス制度とはどのような制度なのかを、あらためて解説します。企業が事前に準備すべきこと、導入後対応すべきことなどにも触れますので、ぜひ参考にしてください。

インボイス(適格請求書)制度とは

インボイス制度とは消費税の仕入税額控除に関する方式で、正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。

インボイス制度の導入後、課税事業者が仕入税額控除を受けるには、インボイスを取得しなければなりません。インボイスとは適格請求書のことで、正確な適用税率や消費税額などを伝えるために売り手が買い手に対して発行する書類(請求書、納品書、領収書、レシートなど)を指します。

インボイスの交付は、適格請求書発行事業者のみが可能で、適格請求書発行事業者に登録できるのは課税事業者のみとなっています。言い換えると、免税事業者からの課税仕入れの場合は控除対象にならず、買い手側はその取引にかかる仕入税額控除を受けられないことになるのです。

インボイス制度は事業者間の取引において、消費税率や消費税額を正確に把握する目的で導入されました。インボイス制度の導入により消費税の不当利益(益税)をなくし、公平な消費税の運用が可能になるとされています。

インボイス(適格請求書)制度に関して企業が準備しておくこと

インボイス制度の導入にあたり、企業はさまざまな準備をしなければなりません。ここでは、インボイス発行側(売り手側)とインボイス受領側(買い手側)、それぞれに必要な準備について解説します。

  インボイス発行側(売り手側)としての準備

インボイス発行側は、以下のような準備が必要です。

  • 取引先の状況を確認する

    取引先がインボイスの発行を必要としているかどうかを確認しましょう。取引先がインボイスの発行を必要としている場合、適格請求書発行事業者になることを検討しましょう。

    すでに課税事業者の場合は、適格請求書発行事業者になった場合のデメリットはないため、速やかに登録手続きを行います。現在免税事業者の場合は、適格請求書発行事業者になることで消費税の納税義務や納税にかかる業務が発生するため、十分な検討が必要です。

  • 適格請求書発行事業者に登録する
    適格請求書発行事業者になることを決めた場合は、適格請求書発行事業者への登録が必要です。「適格請求書発行事業者の登録申請書」をe-Taxまたは書面で税務署へ提出し、審査を受けます。審査終了後、適格請求書発行事業者として登録され、登録番号が発行されますので、インボイスの発行を必要とする取引先に登録番号を知らせます。
  • インボイスを発行・保存するための体制を整える
    適格請求書発行事業者への登録が済んだら、インボイスを発行・保存するための体制を整えましょう。インボイスを発行するには、会計システムや請求書発行システムなどの導入やバージョンアップ、インボイスの要件に対応したシステムの準備などが必要です。

  インボイス受領側(買い手側)の準備

次に、インボイス受領側としての準備について解説します。

  • 仕入先が免税事業者か課税事業者か確認する

    インボイスが必要な場合は、仕入先が適格請求書発行事業者の登録を受けているか、もしくは登録を受けるか、確認が必要です。適格請求書発行事業者登録を行った課税事業者は、以下のサイトから確認できます。

    新しいウィンドウ:国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト

    仕入先が適格請求書発行事業者にすでに登録済みの場合、もしくは登録した場合は、登録番号を確認し、インボイスの発行を依頼します。仕入先が現在免税事業者で適格請求書発行事業者へ登録しない場合は、インボイスを受けられないため仕入税額控除の対象外となります。

  • インボイスを受領・保存するための体制を整える

    インボイス制度開始後、買い手側はインボイスの保存が必要になります。また、インボイスとそれ以外の請求書を判別したうえで仕訳をしなければなりません。会計処理が煩雑化する可能性があるため、必要に応じて会計システムや請求書発行システムなどの導入やバージョンアップなどをしておきます。

  発行側・受領側に関わらず抑えておきたい注意点

発行側も受領側も、次の3点について抑えておきましょう。

  • 経過措置
    インボイス制度開始後は、適格請求書発行事業者以外から仕入れた分は仕入税額控除を受けられなくなります。ただし6年間の経過措置があり、相手が免税事業者の課税仕入れにおいても3年間は80%、その後3年間は50%の仕入税額控除が可能です。
  • 支援
    コストの負担が大きく、インボイス制度の準備がスムーズに進まない場合は、小規模事業者持続化補助金の加算やIT導入補助金などの支援を受けることも検討しましょう。
  • 社内周知
    インボイス制度の導入は、経理部門はもちろん、立替えや経費計算など、さまざまな部署の社員にも影響してきます。インボイス制度の基礎知識や運用ルールなどについて、社内周知・教育も必要です。

インボイス(適格請求書)制度開始後の対応

売り手側と買い手側がいずれも課税事業者の場合、インボイス制度開始後はどのような対応をすればよいのか、概要を紹介します。

  インボイス発行側(売り手側)の対応

売り手側は、課税取引が発生したらインボイスを交付します。
インボイスに必要な記載事項は以下のとおりです。

  1. 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)および適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額など
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

なお、小売業・飲食店業・タクシー業・駐車場業など不特定多数相手の業種は、「適格簡易請求書」の発行が認められています。「適格簡易請求書」の記載内容は次のとおりです。

1から4までは同じ

5は「税率ごとに区分した消費税額等または適用税率」

6は不要

30,000円未満の公共交通機関の運送や自動販売機での販売など、一部インボイスの発行が免除される取引もあります。

インボイスを発行した後は、発行日の属する課税期間の末日の翌日から2ヵ月経過した日から7年間、交付したインボイスの写しを保管しなければなりません。

  インボイス受領側(買い手側)の対応

買い手側は売り手が発行するインボイスを受け取り、

  • 登録番号が記載されているか
  • 適用税率が記載されているか
  • 消費税額などが記載されているか

など、必要な項目が抜けなく盛り込まれているかをチェックしましょう。必要事項を記載した帳簿と共にインボイスを保存することで、仕入税額控除が受けられます。

インボイスを受領した場合も、保存義務期間は発行日の属する課税期間の末日の翌日から2ヵ月を経過した日から7年間です。前述のとおり、30,000円未満の公共交通機関の利用や自動販売機での購入など、一部帳簿のみの保存で認められるケースもあります。

インボイス制度開始後の発行側・受領側の対応について詳しくは、次の記事をご覧ください。

インボイス(適格請求書)制度対応に便利なツール

インボイスをスムーズに処理するには、ツールの導入が便利です。ここでは、インボイス制度対応に便利なツールについて紹介します。

  • 請求書発行システム
    インボイス対応の請求書発行システムであれば、請求書をシステム上で発行・送信が可能です。インボイスの要件にもミスなく対応できます。
  • 会計システム
    インボイスとインボイスでない請求書を区別できる機能があると、仕入税額控除が適用される取引とされない取引を区別して処理できるため便利です。
  • 販売管理・受発注管理システム
    取引先が課税事業者か免税事業者か識別できる機能があれば、仕入税額控除に必要な書類を分類しやすくなります。
  • AI-OCR

    受領したインボイスの記載項目が要件を満たしているか確認する際に、AI-OCRがあれば自動的にデータを読み込み、インボイス登録番号や日付、取引先名など必要な項目を自動的に認識してくれます。

    なお、経理部門ではインボイス制度のみならず、2023年12月31日に経過措置の適用期限が到来する改正電子保存法への対応も急務です。多くの環境変化に適切に対応するため、経理DXの実現が求められます。詳しくは下記をご覧ください。

    >「経理DXの進め方とメリットを解説!業務刷新と効率化で経理部門を改善」

インボイス(適格請求書)制度の対応にはAI-OCRなどツールの活用が効果的!

インボイス制度の導入により、売り手側・買い手側それぞれに対応が求められています。導入前よりも業務負担が重くなっている場合、業務フローやタスクを今一度見直しておくことが大切です。業務をできるだけ効率化するには、ツールの活用も有効です。たとえば、AI-OCRなら、受領したインボイスをAIの自動認識により簡単にデータ化できるため、処理時間を大幅に削減できます。

パナソニック ソリューションテクノロジーでも、インボイス制度対応に役立つAI-OCRソリューション「WisOCR for 注文書・請求書」をご提供しています。詳しくは下記よりご覧ください。

今回ご紹介した内容は、あくまでもインボイス制度についての概要です。制度の詳細は、国税庁の下記サイトでご確認ください。

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