1985年、業界に先駆けてGHP1号機の製造・開発を行い、以来シェアナンバーワンを誇るパナソニックは、現在商業施設や学校、オフィスビル、ビジネスホテルなどを中心にガスヒートポンプエアコン(GHP)業務用空調を年間約1万台導入しています。
電気ではなくガスで駆動するエンジンを動力源とし、冷凍サイクルを形成するGHP。そのエンジンを動かすことにより排出された廃熱も暖房熱源として利用するなど、省エネ性能が高いというメリットがあります。また、消費電力が電気ヒートポンプエアコン(EHP)の1/10程度と少なく、大型施設への導入の際も、高圧受電設備が不要という手軽さも魅力です。
加えてパナソニックのGHPは、空調と共に発電を可能とするハイブリット式の機種を取り揃えていることから、災害時の避難所や企業のBCP対策での活用においても優位性があり、実際に過去の被災現場で活躍した事例もあります。
また、室内機にナノイーというパナソニック独自のキーデバイスを搭載することで、空調に加えて空質までケアすることができるという点でも強みを発揮することができます。
現在、GHP開発部門は、他部署で担当している制御部分の工程を除き、総勢約30名のスタッフで構成されています。また、開発拠点の群馬・大泉工場は、GHP生産ラインも同敷地内にあることから、設計・開発の担当者と製造現場が意見を交換しながら連携を図ることができるという利点があります。
業務用空調全般に共通することですが、家庭用空調とは異なり、導入する物件に合わせた仕様のアレンジが求められることがあります。お客様のご要望に応えるべく、営業部門と連携をし、時には厳しいご意見を頂戴することもありますが、逆に大変喜んでお使いいただいているお客様も大勢います。そんなお客様の表情を直に感じられるというのは、開発担当者として喜ばしいことです。
また大型施設への導入を担当した際には困難や苦労も大きいのですが、その分、任務を完了したときのやりがいもひとしおです。以前、私の母校である大学のスポーツ施設の案件を担当したことがあったのですが、そこで練習をするオリンピック選手がメダルを獲得した際には、何か自分が少し貢献できたような想いを味わうことができ、嬉しかったことを覚えています。
私はすでに約30年もの間、GHPの開発に関わってきたこともあり、この分野に対しての思い入れは人一倍あると感じています。そんな私からみて、国内のGHP市場は「成長」というよりも「安定」という段階に入っており、さらにこれから大きく飛躍するには、EHPや吸収式冷凍機(ABS)にはない新しい価値観をGHPに生み出していくことが必要だと思っています。
カーボンニュートラルが叫ばれる昨今、依存エネルギーが電力に集中しています。災害が多い日本では、災害・BCP対応のみならず、電力需要ひっ迫による停電リスクを回避するなどのエネルギーバランスに貢献できるアイテムが見直されつつあり、GHPはそんな時代のニーズにも敏感に対応できる商品です。
一方で海外市場において、GHPは大いなる可能性を秘めた事業分野です。特に私が以前駐在していた中国では、現在でも石炭による発電が主流であり、業務用空調の世界でGHPの認知度は高くありません。世界的な課題となっているCO2削減にもクリーンな天然ガスを利用するGHPは大きく貢献することができるという特性を生かし、今後、環境性能をアピールしたグローバルな展開が可能であると考えています。
このように、これからの国内・海外市場を見据えたGHPの事業展開においては、よりクリエイティブな発想から開発にあたる姿勢が求められることでしょう。そんな理想を目指していくには、共に働く仲間が明るく、楽しく、誇りを持って活躍できるよう、対話を重ねながら職場の環境づくりに取り組むことが必要と考えています。
それを推進する立場である私も、常に前向きな意識で、愛すべきGHPの発展に向けて任務にあたりたいと考えています。