学生時代は吸収式冷凍機の基礎研究をしていました。その経験をそのまま活かせる今の仕事に就けたことはラッキーだったと思います。しかし、実験室での研究が多かった学生時代と比べ、吸収式冷凍機の巨大な装置に向き合う実務では力仕事も多く、体力的に大変な部分もあります。学生時代の研究や経験に加え、現場での対応力が求められることを学びました。
例えば、大きな装置をくみ上げていくには細かな段取りが必要で、そういった場合には周りの先輩からアドバイスをいただきながら、手順を構築していきました。
現在私が担当しているのは、「伝熱管」と呼ばれる部品の中国での製造です。もともとは日本で製造していたものを、中国での展開を見据え、地元メーカーとの協業を深めるというのがミッションです。本来なら頻繁に現地まで足を運びたいのですが、コロナもあり現在は2、3週おきにWEB会議を行い、状況を確認しています。
海外とのやりとりでは国民性の違いから、ちょっとした言葉のニュアンスの違いで大きなミスにつながってしまうこともあります。そのため常に今の状況と次の動きを細かくチェックしながら進めるように心がけています。
今や業務用空調は「冷やす」ためだけの機械から、空質や省エネなどに関する機能を盛り込んだ、複合的な機能まで求められるようになりました。その傾向は新しい機器だけではなく、すでに導入済みの設備に新たな機能を加えるカスタマイズをすることも少なくありません。「カーボンニュートラル」「ガスと電気のハイブリッド」など、時代のニーズに応える改良を施すことで、お客様の役に立つことができる。それも一つのやりがいであると思います。
また以前、オール電化の人気が高まった際、ガスを使用する吸収式冷凍機は「コストを考えると時代に合っていない」と誤解を受けることがありました。しかし細かくシミュレーションし、それに基づいた適正なシステムを組むことで、トータルコストでは決して高い選択にはなりません。吸収式冷凍機の導入を推進する立場の人間として、正しい情報をお客様に提示し、その有益性をわかってもらうことも、プロとして重要な姿勢だと捉えています。
現在の私の目標は、中国の工場にしっかりとした技術の伝承を行い、現在手がけている伝熱管の生産を、日本の技術者の力を借りずに中国内で完結できるような仕組みを構築することです。そうすることで私たちはその労力や時間を、吸収式冷凍機の世界的な普及を目指した海外展開に向けることができます。
そしてまだまだ一般的に認知度が低い吸収式冷凍機の可能性に光を当て、優れた性能に関する正しい理解を深めていくこと。そんなチャレンジを仲間とともに進められたら嬉しいですね。