図面チェックプロセスのコミュニケーションを
円滑にすることが業務効率化のカギに?
コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及し、ほとんどの業務がオンライン上で完結できるようになった。しかし、紙の図面を扱う設計業務については、アナログからデジタルへの移行に苦労しているのが現状だ。特に建設業においては、時間外労働の上限規制による「2024年問題」や団塊の世代が後期高齢者になる「2025年問題」の労働人口減少を背に、業務効率化が喫緊の課題になっている。本記事では課題解決のカギについて、パナソニック ソリューションテクノロジーと日本HPに話を伺った。
「図面のデジタル化」は生産性や業務効率を向上させるカギ
さまざまな業務でデジタル化が進む一方、紙を使ったアナログな作業がまだ残っているところも多く、生産性や業務効率の向上を妨げるシーンが増えてきた。実際、そうしたアナログ作業が問題になっているのは「図面」を扱う現場だという。具体的には、建設、製造、不動産、エンジニアリングなどの業界における「設計」にかかわる業務が挙げられる。
たとえば建設業では、設計者が建物の図面を作成し、その図面を建築主、施工担当者、構造計算者、CADオペレーター、管理担当者などで共有して、建物を作り上げていく。しかし、建物が完成しても終わりではない。図面をもとに改修や維持管理を行っていく必要がある。この完成まで、および維持管理の過程において、紙ベースのアナログな作業が多く残ることで、業務効率が上がらないケースが多いのだという。
企業のデジタル化やDXを支援しているパナソニック ソリューションテクノロジーの志水優里氏は、業界を取り巻く環境について、こう説明する。
「建設業では、働き方改革関連法(時間外労働の上限規制)の適用が2024年4月から始まり、労働環境の改善が大きな課題となっています。また、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になることで起こる、深刻な人手不足(2025年問題)も懸念されています。そうしたなか、生産性や業務効率を向上させるカギとなるのが図面のデジタル化です。図面をCADデータで共有したり、PDFファイルをメールで配布したりする取り組みが進んでいるものの、多くの現場ではこうした取り組みのなか、課題に直面しているといいます」(志水氏)
「専門性の高いソフト」と「使いにくいハード」が足かせに
図面のデジタル化を妨げる理由の1つは、ソフトの専門性の高さだ。CADデータは主に設計者やオペレーターの担当領域であるため、関係者全員が等しく扱えるわけではない。一方、PDFファイルにすると閲覧はしやすくなるが、レビューや修正対応が煩雑になる。そもそもCADデータやPDFファイルは、ITに詳しくない現場の施工担当者にとってハードルとなり、「専門知識が必要なソフトを使うくらいなら、紙の図面のままでいい」となりやすいのだ。
もう1つの理由は、ツールの使いにくさだ。CADデータのような設計図面を作成し管理していく際には、性能の高いPCやワークステーションが必要だが、関係者全員がその作業環境を整えることは難しい。特に近年は、3D CADやBIM/CIM、VRなどの採用が広がっており、性能のたりないハードを使うことは負担になってしまう。また、図面を現場で閲覧するケースもあるが、どのようなPCを選定すればいいか悩むシーンも多い。
パナソニック ソリューションテクノロジーの倉光 英憲氏は、現場が抱える課題をこう説明する。
「図面は関係者のコミュニケーションツールでもあります。図面のレビュー、工事費用の積算、修正履歴の保存、進捗管理などをすべての関係者が簡単にできることが求められますが、実際にはCADデータやPDFをうまく扱えず、表計算ソフトにレビューや修正事項を保存して手作業で管理しているケースも見受けられます。専門知識が必要なく、誰でも簡単に使えるソフトとハードが求められているのが現状です」(倉光氏)
米国のトップ建設業者99%が利用する「Bluebeam Revu」
パナソニック ソリューションテクノロジーが、こうした現場の課題を解消し「図面のデジタル化」を推進するために展開しているソフトウェアが「Bluebeam Revu(ブルービーム・レビュー)」だ。Bluebeam Revuは、米Bluebeam社が開発・提供するWindows用の図面専用PDFソフトウェアで、図面チェックのプロセスにおけるコミュニケーションを円滑化するのに役立つという。
パナソニック ソリューションテクノロジーは、国内で唯一のBluebeam社認定パートナーとして、図面を扱うさまざまな業界・業種向けに展開している。
「全世界で160ヵ国300万以上のユーザーに利用されている実績があります。特徴は、検図、進捗管理、積算、施工監理、検査など、図面業務に特化した専門機能を多数搭載していること。また、クラウドを介してデータを共有できるため、テレワーク環境でも、簡単に図面の共有ができ、同時書き込みも可能です。米国では、トップ建設業者の99%、トップ設計企業の86%がユーザーであるなど、業界標準の図面PDFソフトウェアとして活用されています。専門的な知識が不要なため、CADソフトと併用することで、誰でも簡単に図面によるコミュニケーションとコラボレーションができるようになります」(志水氏)
図面に関する多彩な機能を提供するBluebeam Revuだが、特に注目すべきが、コミュニケーションとコラボレーションに関する機能だ。大きく3つの機能がある。
図面によるコラボレーションを実現する3つの注目機能
1つめは、マークアップ機能だ。これは、PDFファイルの図面上に、写真、囲みマーク、手書き、スタンプなどを使って、レビューや修正事項を書き込むことができる機能だ。図面の該当箇所を直接マークアップすることができるため、図面を見た関係者はその場でレビュー事項や修正事項を把握することができる。
2つめは、履歴管理機能で、マークアップの履歴をリストとして表示することができる。マークアップ機能では、指示された内容に対して応答を返すことができるが、そのやりとりを履歴として残すことで作業状況や検討内容の経過追跡が可能となる。これにより、進捗管理を行ったり対応漏れを防止できるうえ、PDFへの指摘事項を表計算ソフトで別途まとめるといった作業も必要なくなるため、工数の削減にもつながる。
3つめは、クラウドを活用した情報共有だ。これは「Studioクラウド」と呼ばれる機能で実現している。自社の業務システムにVPNなどを使って外部からアクセスさせたり、PDFをメールで送付したりする必要がなく、プロジェクト関係者にPDF図面を安全に共有することができる。
「クラウドを活用して、時間や場所にとらわれずスムーズにPDF図面でのコラボレーションが可能なため、リモートワーク対応や働き方改革の取り組みでも活用できます」(倉光氏)
建設業界のあるお客さまは、Bluebeam Revuを導入し、マークアップ機能を効果的に利用することで、図面チェック作業時間がトータルで30%ほど削減できたという。
DXやAIのトレンドを受けPCに求められる処理能力も向上
Bluebeam Revuは、図面に特化したPDFソフトウェアであるため、標準的なスペックのPCがあればすぐに利用することが可能だ。
ただ図面のデジタル化については、近年のDXやAIのトレンドを受けて、より高性能なスペックが求められるようになってきているという。日本HPの新井信勝氏はこう説明する。
「製造業や建設業、不動産業の設計部門では、PCに求められる処理能力が年々増えてきています。背景にあるのはデジタル化やDXの取り組みです。たとえば、BIM/CIM対応などによる設計業務の高度化や、点群データ取得から3次元データの取り込み、VR/ARに対応したビジュアライゼーション、AIや機械学習を活用したデータ分析など、さまざまな技術に対応していくことが求められます。一方で、デジタル化やペーパーレス化、働き方改革のトレンドを受けて、図面データを出先で確認・編集したり、チームとの情報共有をタイムリーに行いたいというニーズも増えてきています。高いスペックだけでなく、持ち運びしやすい大きさと重量、さらに現場で持ち運ぶために堅牢で信頼性が高く、出先でも安心して使用できる高度なセキュリティ機能を備えたPCが求められるようになっています」(新井氏)
こうしたニーズに応えるために、日本HPが提供するのが、タワー型ワークステーション「HP Z2 Tower G9 Workstation(以下、Z2 Tower G9)」と、モバイルワークステーション「HP ZBook Firefly 14inch G11 Mobile Workstation(以下、ZBook Firefly 14inch G11)」だ。
日本HPが提供する2つのワークステーションの魅力とは
Z2 Tower G9は、多くの製造業、建設業の設計や設備管理などの業務で利用されているミニタワー型のベストセラー製品。
「最大24コアの第14世代インテル® Core™ i9 プロセッサーと、NVIDIA®RTX™ 5000 Adaのハイエンドグラフィックスを搭載可能な拡張性の高いモデルで、複雑なプロジェクトにも最高のパフォーマンスを発揮できます。CADソフトをはじめ、製造業や建設業における主要なソフトウェア アプリケーションの認定を取得しているので、安心して業務に集中いただけます。また様々な業務アプリケーションを利用してBluebeam Revuで共有するためのPDFデータの作成を快適に行っていただけます。」(新井氏)
ZBook Firefly 14inch G11は、持ち運びに最適な14インチディスプレイと、高性能かつ堅牢性を両立し、1.5kgの重量を実現したモバイルワークステーションだ。
「利用シーンに合わせて、最新AI搭載インテル® Core™ Ultra 7/5 シリーズ内蔵グラフィックスか、NVIDIA RTX A500グラフィックスを選択できます。最大2TBのPCIe® Gen4 x4SSDストレージと、3セル 56Whrの内蔵バッテリを搭載し、バッテリ節約のためのインテリジェント機能により、テレワークや現場での作業を快適に実施できます。生産性向上とコラボレーションを強化するAI機能、HP Wolf Security による万全のセキュリティ保護を提供しますので、出先でBluebeam Revuと合わせて様々な業務用アプリケーションや、Web会議も併せて快適にご使用いただき生産性を上げていただくことが可能です。」(新井氏)
パナソニック ソリューションテクノロジーが展開するBluebeam Revuと日本HPのワークステーションの組み合わせは、図面のデジタル化や、業務DX、AI活用を目指す企業にとって、たいへん魅力的な提案となるだろう。「図面PDFによるコラボレーション」を実現し、業界に訪れている変革の波を乗り切っていきたいところだ。