アルコール・加熱に耐性を持つエンドトキシンを不活化

画像:アルコール・加熱に耐性を持つエンドトキシンを不活化

喘息や鼻炎などのアレルギー様症状を悪化させる一因であるエンドトキシン(細菌由来の毒素)に対して、ナノイー(帯電微粒子水)技術の不活化効果を実証しました。

※ 兵庫県立大学 客員研究員 向本雅郁氏の監修の下、行われたものです。
※ 試験は45Lの試験空間で実施され、実使⽤における製品の効果を検証したものではありません。
※ 本検証は症状悪化の一因となる化学物質への効果検証であり、症状悪化そのものに対する効果を検証したものではありません。

INDEX

エンドトキシン(細菌由来の毒素)は、喘息や鼻炎などのアレルギー様症状を悪化させる可能性が示唆されています。また、加熱やアルコール消毒に対する耐性があるため、不活化が難しい物質です。
本検証では、エンドトキシンに対するナノイー(帯電微粒子水)技術の不活化効果を実証しました。

【検証①】エンドトキシン標準品が入ったシャーレを45L空間に入れ、シャーレから5㎝の位置でナノイー(帯電微粒子水)を照射。加熱処理・アルコール処理と残存率を比較
【検証②】大腸菌懸濁液が入ったシャーレを45L空間に入れ、ナノイー(帯電微粒子水)を照射

【検証①】ナノイー(帯電微粒子水)技術でのみ99%以上の不活化効果を実証
【検証②】99%以上の不活化効果を実証

WORDS

エンドトキシン:

グラム陰性菌(大腸菌など)の表面に存在し、アルコールや加熱に対して耐性を持つ物質です。菌が死滅した後も失活せず、菌の表面に残存するか、大気中へと拡散します。免疫作用や発熱性をもつことから、医療現場で広く認識されています。

さらに詳しく

背景

エンドトキシンは、大腸菌などの細菌に由来し、喘息や鼻炎などのアレルギー様症状を悪化させる可能性があります※1 ※2 。ハウスダストに含まれるほか※3 、PM2.5や黄砂に付着することも確認されています※4 ※5 。また、加熱やアルコール消毒に耐性を持つため、不活化が難しい物質です。一般的な消毒では、細菌を死滅させられても、エンドトキシンは不活化されない恐れがあります。
本検証では、ナノイー(帯電微粒子水)技術のエンドトキシンに対する不活化効果を検証しました。

画像:エンドトキシンが付着する/含まれる物質 ハウスダスト、黄砂、PM2.5

検証方法

【検証①】
エンドトキシン標準品が入ったシャーレにナノイー(帯電微粒子水)を照射
ナノイー(帯電微粒子水)を48時間照射したものと加熱処理(加熱90℃、10分処理)、アルコール処理(エタノール80vol%、5分処理)を行ったもののエンドトキシン活性の残存率を比較

画像:実験の図解 ナノイー発生装置とエンドトキシン標準品の距離は5cm

【検証②】
大腸菌懸濁液が入ったシャーレにナノイー(帯電微粒子水)を48時間照射

画像:実験の図解  ナノイー発生装置と大腸菌懸濁液の距離は5cm

検証結果

【検証①】
ナノイー(帯電微粒子水)技術でのみ99%以上の不活化効果を実証

画像:エンドトキシン標準品にアルコール処理、 加熱処理を行った際のグラフ 不活化効果は見られず
画像:エンドトキシン標準品にナノイー(帯電微粒子水)を照射した際のグラフ 99%以上不活化

【検証②】
ナノイー(帯電微粒子水)技術で大腸菌を用いたエンドトキシンに対する99%以上の不活化効果を実証

画像:大腸菌懸濁液での検査結果のグラフ 99%以上不活化

まとめ

喘息や鼻炎などのアレルギー様症状を悪化させる一因であるエンドトキシン(細菌由来の毒素)に対して、ナノイー(帯電微粒子水)技術の不活化効果を実証

画像:兵庫県立大学 客員研究員 大阪公立大学 名誉教授 向本 雅郁 氏

兵庫県立大学 客員研究員
大阪公立大学 名誉教授
向本 雅郁 氏

エンドトキシンは喘息や鼻炎などのアレルギー様症状を悪化させることが示唆されています。PM2.5や黄砂などの大気汚染物質やハウスダストにも含まれていることが報告されており、特に黄砂は春季に観測日数が増えるため注意が必要です。
また、加熱やアルコール消毒に耐性を持ち、細菌を死滅させてもエンドトキシンまでは不活化できない可能性があります。 
そのため、今回ナノイー(帯電微粒子水)技術のエンドトキシンに対する不活化を実証したことの意義は大きいと思います。

※ 弊社から向本先⽣に依頼し、頂いたコメントを編集して掲載しています。

【プレスリリース】
アルコール・加熱耐性のある毒素をナノイー(帯電微粒子水)技術で99%不活化~エンドトキシンで実証~(2025年3⽉6⽇)
https://news.panasonic.com/jp/press/jn250306-1

関連リンク
本検証で対象となったエンドトキシンの他にも、アレルギー様症状に関わる物質に対する抑制効果が実証されています。

エンドトキシンとは

エンドトキシンとは

エンドトキシンの残存

エンドトキシンは、グラム陰性菌(大腸菌、サルモネラ菌など)の表面に存在する物質で、菌が分泌する毒素であるエクソトキシンとは区別されます。普段は細胞壁を構成しており、細胞分裂時にごく少量が分離します。また菌が死滅しても失活せず、菌の表面に残存したり、分散したりすることが知られています。エンドトキシンは免疫反応の一部を担うほか、血中に侵入すれば微量でも発熱を引き起こすパイロジェン(発熱物質)として作用します。加えて、傷口などから体内に大量のエンドトキシンが入り込むと、急性の循環不全が起こることがあります(エンドトキシンショック) 。そのため、医療現場ではその危険性が広く認識されており、エンドトキシンフリーの注射剤を使用するなど、徹底した管理が求められています。エンドトキシンの毒素の本態はリポ多糖(LPS)で、糖鎖部分とリピドAと呼ばれる脂質部分から成ります。リピドAが遊離することで、様々な有害反応を引き起こすと考えられています。

画像:エンドトキシンの化学式

※1 参考:M.Berger et al. “Lipopolysaccharide amplifies eosinophilic inflammation after segmental challenge with house dust mite in asthmatics”, Allergy, vol. 70, No. 3, pp. 257-264, 2014.
※2 参考:Braga CR et al. “Nasal provocation test (NPT) with isolated and associated dermatophagoides pteronyssinus (Dp) and endotoxin lipopolysaccharide (LPS) in children with allergic rhinitis (AR) and nonallergic controls”, J Investig Allergol Clin Immunol., vol. 14, No. 2, pp. 142-8, 2004.
※3 参考:Peter S. Thorne et al. “Endotoxin Exposure Is a Risk Factor for Asthma The National Survey of Endotoxin in United States Housing”, American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, vol. 172, No. 11, pp. 1371-1377, 2005.
※4 参考:市瀬孝道「大気汚染(PM2.5, 黄砂等)とアレルギーに関する研究の進展」、『アレルギー』、第63巻8号、pp.1085-1094、2014.
※5 参考:Yahao Ren et al. “Enhancement of OVA-induced murine lung eosinophilia by co-exposure to contamination levels of LPS in Asian sand dust and heated dust”, Allergy Asthma Clin Immunol., vol. 10, No. 1, pp. 30, 2014.
※ 6 参考:桜井純.細菌毒素ハンドブック.サイエンスフォーラム,2002.