洗剤に含まれる皮膚刺激成分(界面活性剤)の 分解効果を検証

画像:洗濯物によるかぶれ テキスト:洗剤に含まれる皮膚刺激成分(界面活性剤)に対して「帯電微粒子」技術による分解効果を検証

界面活性剤が油汚れを離脱させるのと同じ現象が洗剤に触れた皮膚の表面でおこると、皮膚のバリア機能が低下し「刺激性皮膚炎」を発症する恐れがあります。ナノイー(帯電微粒子水)照射によって界面活性剤が分解されることが検証できました。これにより界面活性剤が肌に付着することによる皮膚ダメージを抑制できることが期待できます。

INDEX

界面活性剤が油汚れを離脱させるのと同じ現象が洗剤に触れた皮膚の表面でおこると、皮膚のバリア機能が低下し「刺激性皮膚炎」を発症する恐れがあります。ナノイー(帯電微粒子水)によってこの現象を抑制できないかと考えました。

界面活性剤として使用頻度の高い2種類(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (LAS)とラウリル硫酸ナトリウム (SDS)を選定し6畳空間にて検証しました。

ナノイー技術が洗剤成分である界面活性剤を効果的に分解し、90%以上除去することが実証されました。

WORDS

界面活性剤:

洗剤に一般的に含まれ、水に溶けにくい油を取り囲み、水に溶けやすくする働きがあります。

皮膚バリア機能:

皮膚バリア機能は外部刺激から保護し、水分の損失を防ぎ、皮膚の健康を維持する重要な防御機構です。

背景

皮膚バリア機能低下の原因

かぶれ(接触皮膚炎)は主に、アレルギー反応によっておこる「アレルギー性皮膚炎」と、原因物質のもつ刺激性によっておこる「刺激性皮膚炎」に分類されます。その中でも日常的に使用する洗剤やシャンプー、化粧品などに含まれる界面活性剤が原因となる「刺激性皮膚炎」に着目しました。

画像:皮膚バリア機能低下の原因 毎日のシャンプー 洗濯洗剤 メイク用品

着眼点

界面活性剤とは

「刺激性皮膚炎」の原因の1つである界面活性剤は、界面(物質の境の面)に作用して、性質を変化させる物質の総称で、汚れを落とすためには必要不可欠な洗剤の主成分となるものです。

界面活性剤による皮膚刺激のメカニズム

上記で説明した界面活性剤の洗浄メカニズムと同じ現象が洗剤に触れた皮膚の表面でおこると、皮膚のバリア機能が低下し「刺激性皮膚炎」を発症する恐れがあります。 バリア機能が正常な状態の肌では、皮膚表面の皮脂膜がバリアとなり肌を刺激物質から守りますが、界面活性剤が肌に付着すると親油基が皮脂膜に吸着します。肌表面の外側に配列された親水基が外部の水分に引っ張られ、(汚れが繊維から離脱する分散作用と同様に)皮脂膜が浮いた状態となり角質層との間に隙間ができます。皮脂膜の働きが弱くなり喪失することで、皮膚から水分が抜け出し、外部からの刺激が肌の奥に侵入しやすくなるのです。

画像:バリア機能が正常な状態 外部からの刺激 皮脂膜 角質層 表皮細胞 水分

皮膚表面の皮脂膜がバリア機能として肌を刺激物質から守る

画像:界面活性剤が肌に付着 脂膜を浮かせる

親油基が皮脂膜に吸着、親水基が水側に配列し皮脂膜を浮かしてしまう

画像:肌のバリア機能が低下した状態 外部からの刺激 水分

皮脂膜から皮脂が奪われて、バリア機能が低下=皮膚ダメージが発生

刺激成分から皮膚を守るために【着眼点】

様々な物質に作用しやすいOHラジカル(高反応成分)を含むナノイー(帯電微粒子水)により、皮脂膜を喪失する原因となりうる界面活性剤の親油基を分解することで、肌に付着しても皮膚ダメージを抑制できると考えました。

画像:ダメージ抑制仮説 界面活性剤の親油基をナノイー(帯電微粒子水)が分解 皮脂膜が失われない

※1 検証機関:一般財団法人 化学物質評価研究機構(CERI)報告書番号 452-21-A-0134、452-21-A-0075
※2 CERI 有害性評価書 直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩(P.18 表7-2)
※3 Cosmetic Ingredient Review(1983)「Final Report on the Safety Assessment of Sodium Lauryl Sulfate and Ammonium Lauryl Sulfate」、Journal of the American College of Toxicology (2)(7),127-181.(P.164、P.168 参照)

検証方法

実験用のチャンバー (広さ6畳 / 空間容積:24m³) 内に、ナノイー(帯電微粒子水)発生装置を搭載した送風装置を配置し、送風装置の吹き出し口から上方40cmの位置に、界面活性剤を塗布した繊維片を吊るします。ナノイー(帯電微粒子水)発生装置と送風装置を作動させて、界面活性剤を塗布した繊維片に、ナノイー(帯電微粒子水)を3時間曝露します。( ナノイー(帯電微粒子水)が送風装置の風に乗って繊維片に到達し、ナノイー(帯電微粒子水)による界面活性剤の分解反応が進行)3時間の曝露(分解反応)完了後、繊維片を回収し、分析しました(液体クロマトグラフ質量分析:LC / MS)。

画像:検証方法 帯電微粒子水発生装置を搭載した送風装置 界面活性剤を塗布した繊維片

検証機関
一般財団法人 化学物質評価研究機構

検証対象
界面活性剤を塗布した繊維片
界面活性剤
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)

検証空間
チャンバー(空間容積:24m³)

検証方法
① ナノイー(帯電微粒子水)の曝露
検証機材の設置後に、3時間曝露
② 効果の判定
曝露終了後に繊維片を回収
界面活性剤の残留量を測定し、残存率を算出

検証結果

ナノイー(帯電微粒子水)の3時間曝露で界面活性剤を90%以上分解

ナノイー(帯電微粒子水)を3時間曝露した場合と、曝露しない場合(ブランク)の界面活性剤の残留量を比較しました。縦軸の残存率(%)は、曝露群の残留量をブランクの残留量で割った比率です。LAS(使用頻度が高い)ではブランクに対する曝露群の残存率は 4.6%(分解率 = 95.4%)、SDS(皮膚刺激性が強い)では曝露群の残存率は 9.0%(分解率 = 91.0% )、90%以上分解されることが分かりました。

画像:検証結果 ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 分解率95.4%

ナノイー(帯電微粒子水)を3時間暴露した後の残存率
LAS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)

画像:検証結果 ラウル硫酸ナトリウム 分解率91.0%

ナノイー(帯電微粒子水)を3時間暴露した後の残存率
SDS(ラウリル硫酸ナトリウム)

専門家の声

皮膚刺激成分(界面活性剤)が皮膚を守る皮脂膜(バリア機能)を破壊し、その隙間から分子量の大きい刺激性物質が肌内部に侵入することにより、刺激性皮膚炎とよばれる炎症やかぶれが引き起こされます。洗濯後、衣類に残留した界面活性剤をナノイー(帯電微粒子水)で分解することで皮脂膜の喪失を抑制し、刺激性皮膚炎の発症リスクを低減させる効果が期待できます。

写真:森島陽一先生 松下記念病院 皮膚科部長

松下記念病院
皮膚科部長 森島陽一先生

※ 弊社から森嶋先⽣に依頼し、頂いたコメントを編集して掲載しています。